第3話
「お前、これを食べて嫌な事消えたのか?」
「うん」
みぃは元気に頷く。
「あのね、みぃの幼稚園に意地悪なお姫様がいてね…」
―――――おいおい、意地悪なのはお妃様じゃねぇのか?
涼は苦笑しつつも、みぃの話しを黙って聞いた。
鈴を転がすようなみぃの声が、涼の耳に心地よく響く。
「そのお姫様がね、みぃの事を馬鹿にするの。だから、いつも
朝になるとお腹が痛くなって、幼稚園に行けなくなっちゃうんだ。
そしたらね、ばあやがおまじないをかけた後に、魔法のお薬よって
『お星さまの欠片』をくれるの」
小瓶を振ると、コロコロと優しい音がする。
要するに、登園拒否のガキを飴で釣って、幼稚園に行かせたって訳か…
たいした効き目だ。
「このお薬すごいのよ。
食べると、すぐにお腹が痛いのも治っちゃうの。
幼稚園のお友達も、いっぱい出来たんだから」
だから、お兄ちゃんも食べてみて。
みぃの目は、そう訴えていた。
涼は金平糖を口の中に放り込んだ。
優しい甘さが、ゆっくりと口の中に広がっていく。
「どう?効いたでしょ?」
期待に満ちた目で見つめられると、無下には出来ない気分になり
「うん…なんとなく元気が出てきた…かも…」
と呟いてみる。
みぃの顔に笑顔が広がった。
つられて、涼の口元にも笑みがこぼれる。
「なあ、お前。今度そいつに苛められたら蹴りのひとつも入れてやれよ」
「蹴り?」
みぃが小首を傾げる。
「蹴りってのは…キックの事だよ」
「みぃ、キックなら判るよ!今度忍ちゃんに意地悪されたら、キックしちゃうね」
「お、おう。負けんなよ…」
こんなアドバイスをして良かったのか?
まぁ、いじめられてメソメソするよりは、やり返すくらいの根性がなきゃな…
「いい事教えてくれたお礼に、お薬分けてあげるね」
ポケットからティッシュを取り出すはずみで、何かが落ちた。
拾い上げた涼は、それを見て愕然とした。
両目が大きく見開かれる。
なんで…
「おい、何でお前がこれを持ってるんだよ」
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