理事長のせい

「テストが終わった次の瞬間、なぜか俺はかわいい女の子3人と海に行っていた! 恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」的なことを真顔で言うリア獣、道久君の闇堕ちはその時すでに避けられないところまで来ていたのです。

当時のことを思い出しながら、今の彼はきっと、こう思っています。
(あの時据え膳食っとけばよかった!)

紳士(ロード)の称号を得てしまった以上、周りの目もあって下手なことは言えないので心の中で呟いているのですが「あの頃が人生の絶頂期だった!」という後悔の念がダダ漏れです。もしあそこで勇気を出して冒険していれば、今頃は童貞も捨てて、こんな鎧などまとわなくて済んだのに。デリヘル好きの同僚に白目を向けながらも、本当はとても羨ましいと歯噛みせずに済んだのに。まだ30歳なのに過去の栄光にすがるのはみっともないと思いつつ、いや、自分はあの時の行動を正当化できるだけの理性をこれまで保ってきたはずだ(でもだからこそ、少しは報われてもいいはずだ)と犯罪者一歩手前の精神状態で毎日を過ごすこともなかった。あいつさえ、あの時あいつさえものにしていれば……

なんて思う自分のすぐ横を見知らぬたれ目の女の子が通るだけでビクつくいまだに小心者の秋山道久30歳・既婚・童貞。もう後がありません。

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