第4話

 ランジさんの家に帰ると、うちの父とランジさんは既にお酒を飲み始めていました。明日の運転に響かないでしょうか...。馬車を操るのは父なので、あまり度が過ぎる飲酒は控えてほしいです。今回は母が家に残ったままなので、止める人もおらず舞い上がっているようですね。

貴「ハハッ、今日は飲むぞぉ!」

父「今日はヴェンデレがいないからな!これなら思う存分飲み通せるな!」

お父様、口調崩れてますよ...。今日は脱力する事が多すぎて語尾に...がつくことが多いような気がします...。一応警告だけはしておきますか。

私「お父様、過度な飲酒は控えてください。明日の馬車の運転に響きますよ。」

父「トゥジョワールまで言うのか...。今日くらい飲ませてくれよぉ!」

私「(イラッ)存在固定切りますよ。」

父「しょうがないなぁ、でも忠告してくれる娘がいるだけ幸せだな!」

うちの笑い上戸は大変にうざいです。あ、私は基本的にうるさくしゃべりかけられるのが嫌いです。なので不必要に会話してくる相手に好感を持つことは滅多にありません。

私「お嬢様、私は他の部屋で夕食を採らせていただきます。それでは。」

ジ「待って!私も行く!」

チッ、せっかく一人で静かに夕食を採れると思ったのに。ですがまあ、彼女も酔っ払い達に絡まれたくないのは分かります。


 隣の小さめの普段使いの部屋に食事を運んできてくれるよう、頼む際に厨房の方々はお嬢さんも一緒に食べることに驚いていましたが、無事、料理は届きました。素晴らしいことに、今日のメニューは海鮮類がメインのようです。うちの近くやセ・ブレ王国では海鮮類は取れません。海に面している地域があるキャルトゥ帝国の貴族だからこそできる贅沢です。

ジ「そういえばトゥジョワール、私、新しく稀少能力が増えたのよ!」

私「後天的にも増えるものなんですね。すっかり先天性のものだけかと。」

ジ「私もそう思ってたんだけど、この間、学校の試験を受けるための下準備として能力の再検査をしたら増えてたの。」

私「それはおめでたいことです。それで、どのような能力が目覚めたんですか?」

ジ「運勢に干渉できる能力らしいわ!G3以下だと能力を使うと必ずデメリットが発生するんだけど、デメリットが発生しなくもなっていたわ」

私「そうですか。」

G3でもかなりの稀少度なので、国にはかなり重宝されるはずです。ちなみに私の能力については、親しい人以外は知りません。どうせ帝国に強制徴兵されて、したくもない戦争に駆り出されるでしょうから。お嬢さんは私の能力については知りません。そろそろ教えてもいいかなとは思っていますが、どうせなら驚かせてみたいというのが本音です。

ジ「ねえ、さっきのブレスレット、ちょっと貸して。」

私「何をするんですか?別に良いですが。」

ジ「秘密よ!」

そういうと、お嬢さんはブレスレットの赤い奇石に触れ、目を閉じました。10秒ほどそうしたままでいると、お嬢さんはブレスレットをこちらに差し出してきました。

ジ「赤い奇石のほうに運気が良くなるように全力で能力を使ったわ。貴女も青い方に自分の稀少能力を掛けて。」

私「(ギクッ)何のことですか?私には稀少能力なんてアリマセンヨ。」

ジ「昔から思ってたけど、貴女って時々あり得ない移動をしたりするからどうせ稀少能力を持っているんでしょう?隠さなくてもいいわ。」

私「バレては仕方ない...。」

どうやら、お嬢さんには私の稀少能力の存在はバレていたようです。まあ、時々かなりあり得ないことをやっていたのでバレても仕方ありませんが。


 彼女は全力を尽くして石に能力を掛けてくれたのですから、私もそれにこたえることにしました。こういう親友の証云々のようなものは結構好きです。私は石に触れ、手始めに存在固定をかけます。これで、このブレスレットと装着者は不滅になりました。不滅は案外、安売りできるので好きです。そして次に装着者の精神の保護を掛け、最後にブレスレットを複製してもう一つ作り出します。勿論、石の位置は逆です。それと、お嬢さんの能力も複製してあります。それを見ていたお嬢さんは口をあんぐりと開けていましたが、貴族の御令嬢がそういう顔をするものではないと思います。私は、お嬢さんに元の方のブレスレットを手渡しました。

ジ「えええええええええええええぇえぇえぇえぇえぇ!」

お嬢さんの叫び声が響き渡りました。


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主人公は結構ノリがいいです。あと、主人公の母親ですが、そのままのヴェンドゥルだと女性っぽくないので勝手にeを付け加えてローマ字読みにしてみました。


2018/6/25/23:41 誤字を修正

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