第5話

父「どうした?一体何があった!?」

ラ「大丈夫か!?ジュディ!」

私「なんでもありません。どうも、お騒がせしたようですいませんでした。(頭グイッ)」

ジ「すいませんでした...。」

あまりにもお嬢さんがうるさく叫んだせいで、父とランジさんがやって来てしまいました。お嬢さんは口先では謝っておきながら、まだ興奮冷めやらぬようで頬が紅潮しています。人って興奮すると頬が赤くなったりするんですね。

ラ「それはいいが、いったい何があったんだ?」

ジ「あのね!トゥジョワールがすごい能力を持ってたの!」

ラ「ハハッ、トゥジョワールちゃん、教えてなかったのか?」

私「すいません、どうせ騒ぐだろうなと思っていたので。」

ラ「確かになあ。ジュディ、彼女は史上二番目とされるG5の能力の持ち主だ。しかも、もう一人に比べて圧倒的に文字の色が濃い。」

ジュディは目を白黒させていますが、物体を材料が何もない状態で複製できる時点でG5であることは分かっていたでしょうに。彼女は先ほど私が手渡した元の方のブレスレットをしげしげと眺め始めました。何もないと知った父たちは笑いながら食堂の方へ帰っていきます。ああ、このまま質問攻めにされるのは面倒なのでそろそろ寝ようかと思います。

私「それではお嬢様、おやすみなさい。」

ジ「え、ちょっ」

そのまま扉を閉め、たまに泊まることになるといつも使っている部屋に移動して、案の定用意してもらえていた布団を使って床の上に寝ることにしました。ベッドなんて贅沢を言ってはいけません。では、本当におやすみなさい。


 目が覚めると、外には真っ赤に染まった朝焼けの空が見えます。少し寝坊気味ですが、まあ問題ないでしょう。私はそのまま起き上がろうとして...起き上がれませんでした。まあ、分かってはいたんですよ。昔からこの家で寝泊まりするといつもこうですから。私を抱き枕代わりに使うお嬢さんを、いつも通り起こさないようにはがし、そのまま部屋から抜け出します。実は、昨日は面倒だったので寝る際に服を変えませんでしたが、貴族にとっては変えるのが常識です。私は一般人なので、それを守る理由もありませんが、お嬢さんが守っていないのはどうなんでしょう。しかも床に寝てますし...。歯を磨いてうちの馬車がおいてあるところまで行ってみると、父は荷物を積み込み始めていました。

父「おはよう、トゥール」

私「おはようございます、お父様。」

言い忘れていましたが、うちの家族は皆、私のことをトゥールと呼びます。誰が略したのかは知りませんが、もう少しまともな略し方にしてほしかったです。私も荷物を積み込むのを手伝いますが、行きに比べると積載量が少ないのですぐに積み込みが終わりました。我が家の馬を連れてきて、馬車につなぎ、出発の準備が整ったところで、ランジさんが起きだしてきました。ランジさんともども、玄関前まで見送りに来てくれる模様です。

父「またな、ランジ。次会うときは4か月後だな。」

ラ「そうだな。今度は奥さんもつれて来いよ。歓待しよう。」

私「では、お世話になりました。」

そして、いざ父が出発しようとすると、馬が動き出そうとしません。正確には、動けないといった方が正しいようです。父はしばらく苦戦しましたが、結局馬を動かすことはできませんでした。仕方がないので、私が試しに降りてみると馬車はギリギリ動きます。いや、別に私は重くないですよ?本当に。

父「二人だと動かないか...。まだ疲労が回復しきっていないようだな。」

私「どうしますか?」

ラ「それじゃあ、トゥジョワールちゃんをうちに預けてくのはどうだ?」

父「ずいぶんと唐突だな。」

ラ「いや、トゥジョワールちゃんが帰ると、娘がうるさいんでな。」

父「どうする、トゥール?」

どちらかというと、私は残ってみたいです。今後の勇者の活動も気になりますし、好き好んで田舎に帰りたいわけではありません。その旨を父に伝えると、案外あっさりと私を置いていくことになりました。

父「じゃあ、急ですまないが、トゥールを頼んだぞ!2週間後にまた来る!」

ラ「おう。それじゃあ、こんどこそまたな。元気でな!」

そういうと父はまだ日が昇りかけている中を、一人去っていきました...。まるで死ぬかのような描写ですが、誰も死にません。存在固定を甘く見ないでください。

ラ「それじゃあ、今日から2週間、君は我が家の娘なわけだ。」

私「二週間、よろしくお願いいたします。」

こうして、私の帝都生活(?)が幕を開けたのであった。

______________________________________

少しだけネタバレすると、この後は学園編です。(大嘘)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る