第3話

 屋台で解説紛いのことをしてみましたが、やはり一般人には食物についての解説は難しいようです。諦めてなにか他の屋台でもみようと思っていたところで、危険な予感がしました。そっと辺りを見回してみれば、くだんの燃えるような髪のお嬢さんがいるじゃありませんか。クッ、なぜ奴がここにいるんだ...!?あ、言い忘れてましたが、私はいい忘れが多いです。あと、ランジさん一家はみなさん燃えるような赤毛をしていらっしゃいます。完全に髪の色が青いうちの家族とは正反対ですね。

嬢「あ、トゥジョワール!やっと見つけた!」

私「ジュディお嬢様、私のような農民の娘はおいておいて、お嬢様の身分にふさわしい相手とご歓談なさいませ。」

ジ「?何言ってるの?トゥジョワールは貴族出身だから別にいいじゃない。」

要するに、彼女とは面倒なので会話したくないというのが私の本音なのですが、彼女にはそれが汲み取れないようです。現に、彼女は既に接近してきて私の腕を捉えています。さて、これからどうしたものでしょうか。確かに能力を使えば合わなかったことにはできますが、どうせランシさんの家に行けば発見されてしまいます。彼女の存在を無かったことにする程には嫌いではないですし...。仕方がないので一緒に屋台でも回ってあげましょう。

私「で、お戯れはこのくらいにして、どこか行きたいところはあるんですか?」

ジ「そうね~、装身具の店をみてみたい!」

私「庶民向けの屋台しか出ていませんからそこまで品質の高いものは売っていないと思いますよ?」

ジ「そこがいいんじゃない!」

そうですか。なぜか質素な装身具の良さについて力説され始めてしまったので、適当に聞き流しながら目的の屋台にまで出向きます。でも、この場合、出店でみせというべきなのか屋台というべきなのか迷いますね。まあ、いつもある店ですから出店でいいでしょう。その出店の店主はかなりお年を召している女性で、微笑ましげに私たちを眺めています。防犯とか大丈夫なんでしょうか。それと、私は来たいから来たわけではなくて強制的に連れてこられただけなんです、信じてください。


 お嬢さんはさっそく装身具を見て回ります、といってもそれほど数はありませんが。二回ほど端から端へと確認した後に、一つの装身具を手に取りました。中心に青と赤の磨かれた奇石が埋め込まれた金属製の板がついているブレスレットです。それを店主に差し出すと、案の定話しかけられました。

店「お嬢さん達、何かの記念にこれを買うのかい?」

私「いえ、b...」

ジ「そうよ!この子と久しぶりに再会した記念にプレゼントする予定よ!」

店「フム、お互いの髪の色に合わせてきてるのかい...?良いセンスだね」

そういうと、店主は会計を済ませてしまいました。あの、私にもしゃべらせてほしいんですが。装身具は安く、200フレイしかしませんでした。お嬢さんはそれを受け取ると私に手渡して、つけるように促してくるので身に着けてみます。明らかに農作業の邪魔になりそうな予感がします。店主のお墨付き(?)ももらい、無事出店から離れると、そろそろ日が暮れるところでした。もともと回り始めたのが遅かったので仕方がありませんが、もう少し見て回りたかったです。


 お嬢さんは家に帰るかと思いきや、私をそこから少し離れた高台まで連れて行きました。この高台は丘の上のほうにあるので、私は全く問題ありませんでしたがお嬢さんは息を切らしてゼエゼエいっています。しばらく呼吸を整えると、ようやくお嬢さんは顔をあげ、なぜ連れてきたか説明してくれるようです。

ジ「どう?トゥジョワール、ここの景色は。」

私「まあ、当然ながら夕日が遠くに見えますね。ここから見ると街並みが夕日に映えてなかなかにきれいだと思いますよ。」

ジ「なんでこういうときまで説明口調なのよ...。まあいいわ!見れてよかったでしょ?」

どう考えてもここまで登る労力とみあってないと思うんですが。まあ、彼女がそう思うんならそれで構わないでしょう。確かに綺麗ではあります。石造りの門と、そこから一直線に伸びてくる街道を夕日が照らすように設計されているのでしょうか。ところどころ大きな建物はありますが、景観を損ねないような配置になっているようです。家々にはところどころ明かりが灯っていて、それがまた少し寂し気な雰囲気を醸しだしていると思います。一つ訂正です。労力と対価は見合っていました。


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お気づきかと思いますが、主人公の感情は若干薄い(という建前で、作者の表現能力が低い)です。


2018/6/21/16:13 誤字などを修正

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