第8話
私がしばらく泣いた後、ランジさんが話しかけてきました。
ラ「気は済んだか?それじゃあ、俺はしばらく離れてるから新しい能力に慣れておいてくれ。補助が必要ならジュディを呼ぼうか?」
私「いえ、大丈夫です。呼ばなくても、彼女は来るでしょうから。」
泣いて少し気が晴れたせいか、お嬢さんが血相を変えて部屋に飛び込んでくるところを想像して少し笑ってしまいました。そんな私を不思議そうに身ながらランジさんは自分の部屋へと帰っていきました。
その後、やはりお嬢さんが血相を変えて部屋に飛び込んできました。
ジ「トゥジョワール!?大丈夫?いったい何があったの?」
私「落ち着いてください。私は無事ですからそんなに焦らなくても大丈夫です。」
本当は稀少能力を奪われた影響でまともに動ける状態ではないのですが、とりあえず今は無事ということにしておきましょう。私はランジさん達に話した内容と同じことを説明しました。一つだけ違う点は、私の能力が弱体化しているということを伝えた点です。お嬢さんは、私が無事だと聞いてホッとした顔をしていましたが、話が進むうちにどんどん心配そうな顔つきに変わっていきました。
ジ「それで、稀少能力がないから動けないんでしょ?お手洗いとか大丈夫なの?」
私「大丈夫です。そのあたりは奪われる前にかけておいた存在固定で何とかなります。」
ジ「そう、それならいいわ...。」
なんというか、そこで残念そうな顔をされると不安になるんですが。今は弱体化しているので襲われた時の防衛手段がありません。夜はしっかりと部屋に鍵をかけておくべきでしょう。まあ、本人に釘を刺しておくのも一つの手ですから今の内に実行しておきましょう。
私「お嬢様、この部屋に入るときは私に入って良いか確認してからにしてくださいね?」
ジ「あ、当たり前じゃない!そんなこと!」
そうですか。なら良かったです。
その後もしばらくお嬢さんと話している内に、ふと私のブレスレットの赤い方の奇石が割れていることに気がつきました。ああ、これはどう考えても私の命と引き替えに割れたのでしょう、壊れないように能力がかけてあったにも関わらず割れるということは通常では有り得ないことなので。そう思うと、どうしてもまた涙が出てしまうのでした。あ、今度は嬉し涙ですよ。
ジ「どうしたの?急に泣き出したりなんかして。」
私「いえ...お嬢様に幸運をかけて貰ったお陰で生き残ったと思うと、なんだか嬉しくて...」
そこまで言って、言葉が詰まりました。お嬢さんはそんな私を見て頭を撫で始めました。
ジ「ん~、何というか、あなた感情が豊かになったわね。」
私「そうでしょう...か」
ジ「うん。前は絶対に私の前で泣くようなことはしなかったでしょ?きっと、あの能力は、使うほどに能力が薄れていくんじゃない?」
確かに、いつからか私は物事に対して大した感情を抱かなくなっていました。お嬢さんをむやみやたらに避けたかったのも、鬱陶しいという感情しか抱けなくなっていたからではないでしょうか。
その後、お嬢さんは一時間ほど私のところにとどまり、色々と話して帰って行きました。能力がグレードアップするのかは知りませんが、何とかして日常生活に異常をきたす事が無いようにしないといけません。立ち上がって壁伝いで歩いてみますが、歩行能力事態には影響はなさそうです。しかし、遠近感覚が掴めなくなった今、このまま外に出ると2,3歩で物につまづいて転ぶでしょう。これからは毎日一時間ほど部屋の中を歩き回ることにしました。
能力の方は使っている内に元に戻ることを祈るしかありません。もしかしたら戻るかもしれない程度の期待にとどめておいた方が賢明でしょう。なにしろ、稀少能力のグレードが落ちたという話も、上がったという話も聞いたことがありませんから。目を閉じて、ゆっくり深呼吸します。しばらく
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結論から言うと、あくまで認識補助なので形がわかるようにはなりません。
今日も暇です。 Mt.韋駄天 @bismuth_wismut
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