終章
終章
「ソアラ、なんだそのでかいのは?」
いつものようにうちにやってきた王女
「あ、新しい地図です。前のは、破れてしまったので」
「わかったわかった。
「ありがとうございます、ナオキさん」
2m以上の大きさがあるので、重さと長さで王女は
ちなみに前のは「破れた」っていうか「破いた」と言ったほうが正しいが、あれについて話すとソアラがめちゃくちゃ
ともあれ、なんとか運んで以前の地図があった
「じゃあ
「今日届いたばかりなんです。新しい地図は前のより
「それはいいけど、使用人とかに持たせて来ればよかったのに。重かっただろ」
地図を
「そんなことをしたら、ばれてしまうじゃないですか」
「なにが?」
「だって数学をしていると……ばれてしまって……ぁぅ……」
言いながらだんだん目を泳がせ始めるソアラの様子を見て、
「もうばれてもいいのを忘れてたんだな?」
「……えっと……その……」
数学を秘密にしていたころのくせで使用人に運ばせなかったのだ。
王女は顔をそらして
「…………つい」
「
「かわいそがらないでくださいっ」
そんなことがあったものの、新しい地図をふたりで
「よし、各国の大使たちの書状が
最後の調整を終えたことを
届いた手紙を全部差し出すと、
「お
ソアラにそう
「あー、
「なんでしょうか?」
「それが、相手側からの要求で
なんかこう……格式? が必要だそうだ。
慣例的に、条約
それを伝えると、ソアラは明るい顔をした。
「あら、それなら問題ありません。今日、ナオキさんにこれをお
「はい、どうぞ。
そんなことを言われた。
「つまり内定通知書か。
そう思いつつ箱を受け取ると、ソアラがにっこりと
「ええ、できるかぎり最高の地位です」
「そりゃすごい。さっそく開けよう」
自信ありげな
目にも
色の数は多いほど
書かれていることで前書きとかをすっとばして、重要そうな部分を読み上げる。
「えーっと……『ナオキ・セリザワをファヴェール王国
「そうですよね。それでは、就任していただけるのですね?」
…………待てこら。
「
「やっぱり、
「いやいやいや、そういうことじゃなくて。
「……あの、お
「そうじゃなくて。経験豊富で功績がある貴族たちが大勢いるだろ? それを
そんな
「わたしが
あなただけが、わたしの願いに応え、わたしを救ってくれました。ファヴェールの未来を、自由を、守ってくれました」
「いやそれは……
「あなたがなにをなしえたのか、分かりませんか? 人は
今回のわたしたちの〝敗北〟には、それほどの価値があります」
こんこんと、熱意を
「……ひとりじゃできなかった。きみがいた」
「わたしもそうです。ひとりではできませんでした。あなたがいてくれたからできました。
──で、あるならば、わたしたちがずっとふたりでいれば、世界中を変えてやれます。もはや
世界中、とはまた。さすが王族。野望が大きい。
ついつい感心してしまった
「ですから、あなたに
どうするべきか。迷う。
だって
「…………」
だけどその時、
そんな世界を愛してくれる人が、目の前にいるわけで。
『数学を愛してくれる人は、少ない』
──だったら、
「わかったよ。この不才の身には過分な大役ながら、
数少ないそんな人を、大事にしたい。
「ありがとうございます! これからわたしの未来、わたしの運命、この
「……きみけっこう
「うふふ、
「さあ──世界を、変えてやりましょう!」
数字で救う! 弱小国家 長田信織/電撃文庫・電撃の新文芸 @dengekibunko
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