改稿により進化し続けている物語です。
改稿途中でのレビューになることをお許しください。
日露戦争後の大日本帝国に、敵対国であったロシア人の美しき大天使が舞い降りて、そこから運命の歯車が音を立てて回り出す暗夜行譚です。
ロシアの秘宝と魔書がそろう時、未曾有の災厄が帝都に訪れる。それを阻むのは、非科学的な神道、陰陽道、あらゆる術式、そして現人神(あらひとがみ)と呼ばれる祈祷(いのり)によって神威をまとう神器をふるう怪人たち。
同じ現人神でありながら、過去の因縁から別の道をゆく魔人と化した者たち。
似通った悲願を抱きながら、それぞれの執念と矜持が、時に生まれた絆をうち壊し、すれ違いながらぶつかり合う。
苛烈な生きざまは言葉よりも闘いのなかで、目に見える火花となって、しのぎ削られ雄弁に語られていく。
やがて、力及ばぬ敵の前に、忘我にも似た執念に突き動かれた主人公の祈りは、どう変わり果てるのか。
浪漫と熱い魂のこもった、それぞれの果たし合い、いろどる壮麗な語彙にほほをはたかれに行って下さい(笑
画面におさまりきらない世界観のスケールや、現人神のまとう神威の輝きに圧倒されます。
一人一人個性的な人物たちのかけ合いの妙、志士たちの日常のひと幕に歴戦の英雄、天才、現人神たちの素顔が、けして人間ばなれしているのではないと知った時、彼らの背負いしもの、この闘いの意味、覚悟と思いの深さがひしと伝わって来ます。
さあ、若き英雄たちの姿に刮目せよ
(2019/2/11)
この作品の中で最も特徴的なのは、何と言っても熱すぎる程の義理と人情溢れる人間ドラマ!
先程まで命の取り合う壮絶な戦いをしていた敵と、数日後には一緒に戦い、
どの人物も守りたい人のためなら躊躇うことなく自分の命を投げだそうとする。
現代のデスゲームや絆など生ぬるいと感じてしまう程の人情と義理堅さは、舞台となる戦前ならではのものだと思います。
敵となる因縁の相手も、何があっても揺るぎない信念を持ち、どんな手を使ってでも成し遂げようとするその姿は、
悪とは歪んでしまった正義の末路であるという真理を私たちに見せつけています。
この作品の魅力はそれだけではなく、作者のこだわりがこれでもかと注ぎ込まれた大正ロマン溢れる作り込まれた世界観と、祈祷という現代でいう異能力を用いた派手で躍動感のあるバトルシーン。
そして戦乱と激動の時代に生まれ、いつ死ぬか分からない緊迫した生活を送っているかと思いきや、時折肩の力が抜けるというか、思わず笑ってしまう日常の風景・掛け合いも描かれていて、その緩急がまた作品の魅力として光っています。
全てにおいてレベルが高い圧巻の作品でした!お見事です!
我々の知るそれとは別の時を刻んだ架空の日本の舞台の本作ですが、クトゥルフ!現人神!ロシア!新撰組!と男心をくすぐるキーワードが目白押しです。
しかし本作は、形や単語ばかりの安易なファンタジーには逃げない。「架空の日本だから」という甘えや言い訳がない。
現実の歴史、オカルトの知識をふんだんに取り入れた本作に妥協はなく、リアリティの圧があります。
もちろんキャラクターも魅力的で、歴史を知っていればニヤリとくるやりとりがありながらも、我々の知らない時間軸を歩んだ彼らには底知れなさと新鮮さを感じます。
もちろん、主人公である深凪悠雅も、作風にマッチしたヒロイックでストイック、そして時にはそういう性分がためのコミカルさもあって、非常に好感が持てます。
作者のホンキの情熱が読み取れる、掛け値無しの名作です。