オカルト、謀略、想い。境界を超えて交錯するもう一つの『帝都物語』。

我々の知るそれとは別の時を刻んだ架空の日本の舞台の本作ですが、クトゥルフ!現人神!ロシア!新撰組!と男心をくすぐるキーワードが目白押しです。

しかし本作は、形や単語ばかりの安易なファンタジーには逃げない。「架空の日本だから」という甘えや言い訳がない。
現実の歴史、オカルトの知識をふんだんに取り入れた本作に妥協はなく、リアリティの圧があります。

もちろんキャラクターも魅力的で、歴史を知っていればニヤリとくるやりとりがありながらも、我々の知らない時間軸を歩んだ彼らには底知れなさと新鮮さを感じます。

もちろん、主人公である深凪悠雅も、作風にマッチしたヒロイックでストイック、そして時にはそういう性分がためのコミカルさもあって、非常に好感が持てます。

作者のホンキの情熱が読み取れる、掛け値無しの名作です。

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