(完) 香澄のカウンセリングレポート(六)

      『香澄のカウンセリング(調査)レポート(六)』


今回のカウンセリング対象者、および治療・調査結果などを以下に記載。(敬称略)


     一『生徒へのいじめ問題の真相について』


被害者……エリノア・ベルテーヌ(心理学科に在籍)

年齢 ……一九歳

被害 ……加害者に弱みを握られたことによる、金銭要求・暴行未遂・人権侵害。後に本人・関係者などから事情を聞くが、すべて加害者の一方的な逆恨みが関係している模様。

 事件解決後も後遺症などの症状も発症していないことから、エリーの心身は無事回復傾向に向かっていると思われる。


加害者……(一) シンシア・ミラー(法律学科に在籍) (二) モニカ・レイブン(教育学科に在籍)

年齢 ……両名とも二〇歳。

犯行 ……被害者 エリノア・ベルテーヌへの金銭要求・暴行未遂・人権侵害。

犯行動機……被害者エリノア・ベルテーヌとの性格の不一致がきっかけとなり、それがいじめへと発展したと思われる。だが最大の要因として、相手を見下す・忍耐力の欠如・感情の浮き沈みが激しい、などの性格・精神的な問題が数多く確認されている。

 これらの診断結果から、両名は【多重人格(隔離性同一障害)】であると、臨床心理士の立場からフローラは判断する。その見解については、私もフローラと同意見だ。


       二『ワシントン大学 盗難未遂事件の真相について』


加害者……一で事件を引き起こした、(一) シンシア・ミラー (二) モニカ・レイブンによる犯行だと思われる。

年齢 ……両名とも二〇歳。

被害 ……ワシントン大学の備品(構内のガラス数枚の損傷)・職員ならびに関係者数名に対する暴行(何らかの化学薬品を散布・被害者への暴行)

犯行動機……一については認めているが、それ以外の犯行については否認。現状から察するに、加害者両名は大学生活に何らの不満を持っていたと考えられ、それが盗難未遂事件という形で表れた可能性が高い。

 【ルティア計画】の全容が明らかにされたことで、盗難未遂事件を起こした具体的な内容も判明する。この事件の裏には黒幕がいるのだが、その詳細は(四)で詳しく説明する。


       三 『【ルティア計画】の全容ならびに目的について』


責任者……(一) アーサー・ルティア (二) リサ・ルティア の二名。そして彼らが提案する【ルティア計画】によって、IQ一六〇~一八〇を記録する天才児『ルティアNO.Ⅰ~Ⅳ』が誕生する。

年齢……(一) アーサー・ルティア(五一歳) (二) リサ・ルティア(四九歳)

目的……非人道的な方法で命を作り上げ、自分たちの意のままに動く子どもを誕生させること。ルティア夫妻が残した数多くのカルテによると、子どもたちを使って国を支配するといった軍事的目的はなかった模様。

 またリサが子宮内膜症という病気を発症していたことから、当初の目的は何らかの理由で子どもの妊娠が困難な女性に対する、一つの救済措置であったと考えられる。しかし首謀者のルティア夫妻はすでに亡くなっているため、詳細は不明。


          四 【新・ルティア計画について】


首謀者……(一)『ルティアNO.Ⅰ』ことシンシア・ミラー (二) 『ルティアNO.Ⅱ』ことモニカ・オリーブ (三) 『ルティアNO.Ⅳ』ことアルバート・レイブン。事件の黒幕は、アルバート・レイブン。

年齢……(一)~(三)いずれも二十歳前後。しかし正確な年齢については、依然として不明。

目的……【ルティア計画】に関与した関係者、ならびにルティア夫妻らの殺害。そして自分たちの正体を突き止めようとする者に対しても、同じように殺害する予定。

 ダチュラという幻覚作用を発症させる毒薬を使用した犯行が多く、食べ物や飲み物に毒薬を混入したと思われる。また事件の真相を突き止めようとしたAMISA・FBIに対し、『ルティアNO.Ⅳ』は関係者を全員毒殺する計画をたくらむ。しかし亡くなったのは同じ研究所で生まれた、エドガー・レイブンこと『ルティアNO.Ⅲ』。

 またルティア夫妻をおびき出すという目的から、故意に『ワシントン大学 盗難未遂事件』『エリノアへのいじめ問題』を起こす。首謀者はシンシアとモニカであるが、彼女たちを裏で操っていたのはアルバート。


        五 『ルティアNO.Ⅰ~Ⅳ』の正体について


ルティアNO.Ⅰ……IQ一六〇。記憶力に優れた頭脳を持ち、作戦や計画を考える能力に優れている。しかしルティア夫妻にマインドコントロールされているため、その知識を自分の意思で使用することは出来ない。その正体はシンシア・ミラー。

 【新・ルティア計画】によってルティア夫妻を殺害後、AMISA・FBIの捜査を撹乱するために嘘の証言を述べる。だがその計画も後に嘘であることが発覚したため、シンシアの身柄も上級精神病患者を収容する刑務所へ移される。

 またルティア夫妻をおびき出すため、アルバートの命令によって、無関係なエリノア・ベルテーヌへのいじめをもくろむ。


ルティアNO.Ⅱ……IQ一六〇。薬の知識に長けた頭脳を持ち、道具や環境が揃えば病気の治療薬~毒薬まで一人で作れる。しかしルティア夫妻にマインドコントロールされているため、その知識を自分の意思で使用することは出来ない。その正体はモニカ・オリーブ。

 【新・ルティア計画】によってルティア夫妻を殺害後、AMISA・FBIの捜査を撹乱するために嘘の証言を述べる。だがその計画も後に嘘であることが発覚したため、シンシアの身柄も上級精神病患者を収容する刑務所へ移される。

 またルティア夫妻をおびき出すためか、無関係のエリノア・ベルテーヌへ故意にいじめを行う。


ルティアNO.Ⅲ……IQ一六〇。頭脳労働よりも体を動かすことに長けている。人一倍優れた体力を持っているが、ルティア夫妻にマインドコントロールされているため、その知識を自分の意思で使用することは出来ない。その正体はエドガー・レイブン。

 被験者名のクラークというファミリーネームについては、アーサー・ルティアの姉のもの。アーサーの姉もリサと同じ子宮内膜症を発症しており、【ルティア計画】の被験者に志願する。

 大学構内では親しみやすい性格として知られていたが、実はそれもルティア夫妻が用意した薬によるもの。本来のエドガーの性格はまったくの逆で、香澄たちを震撼しんかんさせた。

 【新・ルティア計画】の全容を兄として一緒に生活している『ルティアNO.Ⅳ』から聞くが、それを聞いたエドガーは協力を拒む。そのことが原因となり、『ルティアNO.Ⅳ』に毒殺されるという死を迎える。


ルティアNO.Ⅳ……IQ一八〇。冷静な思考力・頭の回転の早いなどの特徴があり、運動よりも頭脳労働で能力を発揮する。『ルティアNO.Ⅲ』ほどではないが、人並み以上の優れた運動神経も兼ね備えている。その正体はアルバート・レイブン。

 大学構内では女性問題が多い噂があったが、実はそれもすべてアルバートの計算の範囲内。その真意として、大学に通う生徒と友達や恋人などの関係になることを避けるためと思われる。そのためアルバート本来の性格については、社交的で協調性も十分。

 また【新・ルティア計画】の首謀者かつ黒幕でもあり、アメリカを恐怖に陥れる。だがAMISA・FBIらの捜査によって、その全容が暴かれる。


今回のカウンセリング(調査)対象者、および治療結果を以下に記載。(敬称略)


首謀者(加害者)……アーサー・ルティア(精神科医) リサ・ルティア(産婦人科医) シンシア・モニカ(『ルティアNO.Ⅰ』) モニカ・オリーブ(『ルティアNO.Ⅱ』) アルバート・レイブン(『ルティアNO.Ⅳ』・【新・ルティア計画】の黒幕)

被害者……エリノア・ベルテーヌ(親友) フローラ・S・ハリソン(AMISA職員) ワシントン大学(名誉棄損・器物損壊)

犠牲者……(一) アーサー・ルティア (二) リサ・ルティア (三) エドガー・レイブン(『ルティアNO.Ⅲ』【新・ルティア計画】への協力を拒んだため殺害される)

犯行動機・殺害方法……【ルティア計画】に関与した者・真相を突き止めようとする者への殺害。しかし一番の目的は、ルティア夫妻の殺害。殺害方法についても一環しており、ダチュラという毒薬の使用による毒殺。

協力者……マーガレット・ローズ(親友) ジェニファー・ブラウン(親友) ケビン・T・ハリソン(恩師) フローラ・S・ハリソン(臨床心理士・AMISA職員) エリノア・ベルテーヌ(親友・いじめ事件の被害者) 資料を送ってきた謎の人物(その正体は不明) ロバート・パウエル(精神科医) ダグラス・デイル(FBI捜査官) レベッカ・クレット(FBI捜査官)

事件調査者……高村 香澄(心理学サークル臨時顧問)

最終結果……三名の犠牲者が出てしまったが、最終的に【ルティア計画】【新・ルティア計画】の全容を明らかにすることが出来た。事件も無事完結かつフローラから依頼された案件も最後まで調べ通し、結果を残す。


                                  完

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夢のゆりかご~ミステリー編~ 月影 夏樹 @six4ydct

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