心理学シリーズとして描かれた『時の万華鏡』のうち、公募作品用として文字数制限があったため第二幕(八章)からが公開されています。
エリノア・ベルテーヌとの心の行き違いによる仲違いにより夢遊病や解離性同一障害の症状が現れるほど心の傷が大きくなった主人公、高村香澄は罪の意識を深め、その率直な思いを記した日記を残して失踪してしまいます。香澄の心の傷の発端となった亡きトーマスの屋敷を香澄の失踪先と見定め、香澄を説得するために一同は向かいます—。
主に心理戦を中心に描かれたこの章では、心の傷の抱え方は人それぞれだが、心を閉じた人の心を再び開くことの大変さや、友情によって閉じた心を開くための熱意や、最悪の事態を避ける配慮について考えさせられました。そして最終的に閉じた心を開く鍵は人を信じる心に通じることに気付かせられ、心の芯に訴えかける皆の思いが主人公の高村香澄に届き、登場人物たちそれぞれの未来を思う作者の気持ちが差し出されているように思いました。