第6話 魔法奮闘記つー!
リアンさんによると、魔法というものは素質と、精霊達とのコミュニケーションが大切らしい。
そう聞いた私はさっそく、水の精霊たちが集まりそうな森の泉へと向かった。
…なんだかカロンは最近やけに考え込むことが多くなった。
リアンさんの特訓から1週間。
カロンはなにかをずっとぼーっとしており、話しかけても反応しない時が多くなった。
先ほども「森の泉へ向かう」と言った時。以前のリオンならすぐさま反応したものを、リオンには声が届いていなかったようだ。
少し心配になりつつも、以前のリオンの瞳を思い出すと、いまだに寒気がする。一体なにがあったのだろうか。
恐らくこれはセリーナと家族しか知らないストーリーなのかもしれない。
不安な思いを抱きつつも、森の泉の前に立つ。そして呪文を唱える。
「水の精霊よ。我が前に姿を現したまえ。」
すると水の精霊はふよふよと私の周りを飛び回る。
「水の精霊よ、あなたはどうして私を選んだの…?」
不思議に思っていたことを問う。
すると精霊は「……まも、る」と言った。…守る?一体誰から…と聞こうとすると、水の精霊はすっと姿を消した。
そして精霊が消えた直後、背中にどんっという衝撃が加わった。
「ねえ、さま。」
カロンの小さくか弱い声が私の脳に絡みつく。
「カロン。どうしたの?」
「ねえさま、ねえさま、ねえさま」
「ねえさま、行かないで」
まるで縋り付くように懇願するカロンは明らかに何かを怖がっていて。
「姉様はここにいるよ、カロン。」
カロンの目線に合わせて優しく話しかける。
しかしカロンはひたすら「いやだ」を繰り返している。
カロンの手を引いて森から出る。
カロンはずうっと「いかないで」を繰り返しているだけで、何を聞いても答えてはくれなかった。
とりあえずカロンを部屋に連れていくと、カロンは今までなかったような力で私の腕をぎゅっと掴む。
「っ…カロン痛いよ」
「ねえさま、いかないで」
「姉様はカロンのとこにいるって言ってるじゃない。」
そういうと、カロンは涙をぽろぽろ流しながら私のお腹に抱きついた。
ベットにカロンを寝かせる。
「カロン、今日は一緒にお昼寝しようか!最近お昼寝出来なくて、不安になっているのね。ほら、姉様がぎゅってしてあげるから。ね?」
私がそういうと、カロンはこくんっと頷いて、静かに目を閉じた。
…私が甘やかしすぎたのか。
いや、そんなことはない。ハズ…。
すやすやと眠った可愛い義弟の寝顔を見つめて、一緒に眠った。
「…セリーナ。セリーナ。晩御飯よ。」
私たちは夜まで眠っていたらしい。
カロンは「うぅん…」と目を擦りながら起きた。
「今日はキースくんもいるわよ。」
とお母さんは笑いながら言う。
「キース…アイツ来てるの…?」
カロンは少し不機嫌そうに呟く。
「キースくんはあなたのお兄ちゃんになる人なんだから。そんなこと言っちゃダメでしょう?」
お母様はカロンのあたまをぺちっと叩くと、「さぁ起きて」とブランケットを剥がした。
「キース、こんばんは。
私ったら寝ちゃってて」
「こんばんは。とても良く眠ってたね。」
とくすりと笑う。どうやら寝顔を見られたらしい。恐らくお母様が部屋に入れたのだろう。
「…………。」
カロンは無言でもぐもぐと食べている。キースの存在がどうしても嫌らしい。
「あぁ、そういえば明日城から呼び出されてたわよ、セリーナ。」
「うん、分かった。」
私は時々、お父様の連れとして城へ出入りすることがあった。
しかし今回は私に、用があるらしい。
「なら僕も行こうかな。久しぶりにクリアと話したい。」
キースは上品に口の周りを拭くと、そう言った。
「2人で行ってらっしゃい。
カロンは私と一緒にいようね」
お母様、流石です。
カロンは不服そうにしていたが、何も言わずに黙々と料理を口に運んでいた。
転生したら、モブキャラになりました 白兎 @Papipo
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