第5話 魔法奮闘記
この世界では、12歳から魔法学園へ通うことが義務とされている。
一般は7歳かららしいが、貴族は家で学ぶことが可能なので12歳かららしい。まぁそこでヒロインと出会う訳ですが。
キースは基本的にパーフェクトなのでなんでも出来るらしく、分からないことがあったら聞いてね、と言ってくれた。
私は今10歳。そう、あと2年で魔法学園へ入学しなければならないのである。
セリーナは魔法属性が水。
水しか扱えないのか?と言われたらそうでもないのだけど、水が1番相性がいいのである。
雨が降らない地域に雨を降らしに行ったりするくらいにはまぁ使えるのだが。
私は万が一の時のために魔法を極めたい!雨を降らすだけではダメなのだ!
そう思い、私は図書室から魔法に関しての本をせっせと集める。
そして訓練場へ向かった。
…もちろんwithカロンである。
でも魔法の練習は少し危ないよ、というと「安全なところで見ているから」という条件でカロンも付いてきたのだ。
本を読みながら、呪文をひたすら唱える。呪文は不思議と頭の中に植え付けられる。どんな忘却魔法でも、よほど強力なものでない限りはずっと頭に残り続けるらしい。
白の清楚なワンピースはふわふわと風に揺られている。
「…水の精霊よ、汝の力を依代とし、我が前に現れよ。時計塔(クロックタワー)!」
そう唱えると、目の前に勢いよく水が飛び出してきた。
一応時計塔の形はしているが、私の想像していたものとは少し違う。
「うぅん…?」
「お嬢様、自主練ですか?」
そう私に声をかけたのは私の魔術講師のリアンさん。リアンさんは元宮廷魔術師で、この国ではとても有名な人である。
見た目は黒いローブに古木の杖という、the☆魔法使いって感じで、
声はしわがれてはいるけれど、不思議と聞き取りやすい声で。
「えぇ、私もうすぐ魔法学園でしょ、だから練習しておこうと思って!」
息巻いている私を優しく見つめるその姿はまるで孫を見つめるおじいちゃんのようで。
「時計塔(クロックタワー)ですか。なかなか物騒な魔法を習得しようとしているんですねぇ。」
白く伸びた髭を触りながらほっほっほと笑っている。
「…私には無理でしょうか…?」
私がそう聞くと、リアンさんは首を横に振る。
「魔法というものはな、素質のあるものしか上達せん。しかしお嬢様はあの母上の娘。きっと出来ますわい。」
そういうと、杖を地面にたんっと打ち付ける。
「時計塔(クロックタワー)」
突如溢れ出た水が大きな時計塔となった。さっきの私とは比べ物にならないレベルで。
というか呪文なしだったよね?!?!
「魔法はな、必ずしも呪文が必要と言う訳では無いのじゃ。精霊達に祈りを捧げ続けると、自然と想いが通じ合うのじゃ。すると精霊達は自らの願いを声に出さずとも力を貸してくれるようになる。」
リアンさんはにこにこと微笑みながら
話を続ける。
「つまり、魔法の威力というものは精霊達への信頼度のようなものだ。のぅ?」
リアンさんが杖をよこにすっと動かすと、水の精霊が姿を現す。
水の精霊は空気に漂っていて、普通は姿を見せることはない。
しかし魔術師が力を加えることによって水の精霊たちが一体化し、しばらくの間姿を見ることが出来るのだ。
水の精霊はリアンさんの周りをくるくると飛び回り、私の元へやってくる。
するとそっと石のようなものを私の手に持たせた。
そしてそのままくるくると飛び回り、すっと姿を消した。
「おぉ、お嬢様も水の精霊に認められた、ということかね。普通ならありえん事なのじゃが。」
私は手元の石をじっと見つめる。
中央には水の精霊のシンボルが描かれており、綺麗な水色をしていた。
綺麗だな。と思いながら見つめていると、その石は私の胸の中に入っていった。
「…まさか。お嬢様、もう一度時計塔(クロックタワー)を唱えてみるのです。」
リアンさんは好奇心に溢れた目で私のことを見つめる。
「水の精霊よ、汝の力を依代とし、我が前に現れよ!時計塔(クロックタワー)」
すると先ほどの威力とは比べ物にならないほどの水流が時計塔(クロックタワー)を作り上げてゆく。
時計塔(クロックタワー)には様々な攻撃方法があり、極めてしまえば時間を止めることが可能になる魔法だ。
リアンさんが杖でとんっと地面を叩くと、時計塔はすぐさま消える。
「お嬢様、あなたは…」
「リアンさん、どうして突然…?」
「それはな、お嬢様の中に入っていった水の精霊のシルシが原因じゃ。水の精霊に愛された者のみが持つことの出来る石。あぁ、これはセシル様に報告せねば…!」
と興奮気味に語っていた。
(ちなみにセシル様とは私のお母様ことである。)
「お嬢様。その石を持つということはそれなりの覚悟が必要ですぞ。
あぁ、良かったのやら…」
嬉しそうな反面、少し戸惑っているようなリアンさん。
なぜか突然カロンが気になり、カロンの方をちらりと見た時。
私の背筋に冷たいものが流れた。
そこには、何かを恨めしげにみつめるカロンの瞳があった。
あんなカロン、見たことがない。
しかしカロンは私が見ていたことに気がつくと、「お姉様!すごいです!」と私にぎゅっと抱きついてきた。
…一体…?
少し不安な気持ちになりつつも、私に抱きついて離れない義弟の頭を撫でた。
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