紀夫に捧ぐ

沼渕紀夫は恐らく善良な男だ。
そして、平凡な男だ。

サッカーが好きだったのか、それとも部活を指導する事が好きだったのかと言われれば、私は後者だったんじゃないかと思う。

それがバスケットであっても、テニスであっても、吹奏楽であっても、やはり「紀夫ノート」は産まれていたのではないか。

でも、とにかくここではサッカーだったのだ。

紀夫ノートが時空を超えて、新たな世界で産声をあげる全く新しいサッカー。紀夫と全然関係のないところで動く歴史。


天才的なひらめきで発見されたにも関わらず、性格の不一致で見向きもされなかった十進法。

二日酔いで動けない父親が、模擬演習に代理で行かせた八歳の女の子。

お人好しな支配者とその娘の所へ流れ着いた異国の者。

一方で産まれる衝突、他方で育まれる絆。

「サッカーとは」という深遠な問いをたてずにはいられない、歴史あるあるをスパイスにした壮大なサッカー誕生史。


沼渕紀夫に、合掌。


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「擾乱 ≪8≫」まで読了。

私の評価ポリシーにつき、未完の作品は星二つが最高評価。

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