四
イリス=ヒューペリアの人生において、人の死は実にありふれた出来事だった。
森に囲まれた、小さな村落にいたことがあった。子のない老夫婦のもとに拾われ、畑を耕し、山菜を摘んで暮らした。森の中に小さな池があって、その縁に咲いている花々が好きだった。花飾りを作って渡したら、おばあさんはとても喜んでくれた。
その村は、跡形もなく消えた。
現れた竜は灼けつく岩の雨を降らせて、一晩のうちに村の人間を皆殺しにした。イリスは怒りに任せ、光を解放し、竜を焼き尽くした。我に返ると、そこには草の一本もない赤土が広がっていた。森に棲んでいた、どんな生き物の声も聞こえなかった。
同じことが、数え切れないほどあった。物心ついた時には既に親を亡くしていて、その運命を教えてくれる人はいなかった。多くの人間が竜の贄となり、激憤したイリスの光に焼かれた。誰も、イリスを責めず、恨まなかった。そんな人間は、ひとりとして生きてはいなかったから。
イリスは、全てを思い出していた。自分の運命を。自分の罪を。自分に触れ、助け、守り、そして死んでいった全ての者たちの、今際の言葉を。
ゆっくりと、目を開いた。
「……起きましたか」
枯れ木のような男が、枕元に座っていた。澄んだ酒のような匂い。男に染み付いた、薬の匂いだった。
クルム=ビートリッシュは、いつもに増して静かなたたずまいをしていた。褐色の髪に艶はなく、瞳の藍色は暗い。かさついた腕を持ち上げて、あごに手を当てる。こちらには目もくれなかった。
起き上がって、辺りを見回した。遠征に出ていた時の荷馬車、簡易的な診療室だった。
「……リトは?」
「いつだったかも、起きるなりそう言いましたね」
落ち着き払った姿は普段と変わりなかった。しかし、その声はすこぶる平坦だった。
「同じ返答は……できませんが」
イリスは身を乗り出して、噛み付くように言った。
「わたしなら! わたしなら治せるかもしれません。連れていってください! リトのところへ!」
クルムは聞き分けの悪い子供でも見るように、ゆっくりと首を振った。イリスはさらに言い募る。
「そうだ、竜の心臓! 生き返るかもしれないんでしょう? あれを使ったら、もしかしたら……」
「……無理ですよ。連れていくことはできません」
ぞんざいに、皮肉っぽく笑いながら、クルムは言った。
「どうして!」
イリスは叫んだ。どうしてリトを助けようとしないのか。医術師だというのに、思い人だというのに、どうして。
「どうしてって? ないからですよ。彼女の死体なんてものは。見てくるといい」
口惜しそうに、クルムは言った。
「……あなたが残らず焼いてしまったではありませんか」
イリスは、喉が干からびるのを感じた。呆然としながら、震える足で立ち上がった。確かめなくてはならなかった。
「彼女にも、彼女の運命がありました。彼女が死に、あなたが生き残ったのは、避けようのない必然だったのでしょう。それは、理解しているつもりです。今となっては、どうでもいいことですが」
荷馬車を出ていく背中に、クルムの声が投げられた。振り返りたくない、とイリスは思う。だが、振り返らなくてはいけなかった。
「しかし、私も人間のようです。割り切ることはできません。どうしても」
薄く口を開け、濁った笑いを浮かべながらクルムが言った。
「恨みますよ、ヒューペリアさん」
半身を奪われた痛み。それをぶつけられたのは初めてのことだった。かけるべき言葉が見つからなかった。
そのまま、黙って立ち去った。荷馬車が停められていたのは、砦の門にほど近い場所だった。イリスは離れの方へと向かった。それはすぐにわかった。
炭化した骨組みが、わずかに残っていた。地面がすり鉢状にえぐれていた。離れた建物も一部が焼けたり、崩れたりしているが、雨が降っていたことも手伝って、火は既に消し止められているようだった。日が昇ってきたところで、雨は既に止んでいた。
竜のなれの果てを見つけた。竜鱗がどろどろに融け落ちて、くすんだ真鍮色の池を作っていた。それをどこかで見た気がして、思い出した。凱旋で見た紅竜の姿。片側が融けて歪んだ相貌は、イリスとの戦いでそうなったのだ。竜の骨肉は、全て蒸発していた。鱗と牙、爪だけが残り、かろうじて竜だったころの形を留める抜け殻と化していた。
イリスは、惨憺たる滅びの跡を必死に調べた。顔が煤けるのも、灰を吸い込むのも、手が傷つくのもまるでいとわなかった。しかし、探すべき場所はほとんど残されていなかった。火のつくものは全て燃え、蒸発している。そこは灰と炭の砂漠だった。命の欠片はどこにも眠っていなかった。
と、光るものが目についた。イリスは灰を掘って、それを拾い上げた。
初めは何かわからなかった。銀色の、歪んだ金属。手に収まるくらいの塊は細長く、ところどころに細い筋が走っているように見えた。
(……髪、飾り)
さとったとき、嗚咽が漏れた。リトがいつも付けていた、母の形見だと言っていた、銀の羽の髪飾り。それが融け落ち、冷えて固まったものが、手の内にある。
黄昏に溶け込むようなとび色の髪を思い出した。あどけなく妖艶な、まぶしい微笑みを思い出した。抱き寄せた時の甘い匂いを、ささやき声を、手の温もりを思い出した。全てはもう、この世ならぬものだ。
イリスは泣いた。こぶしを地面に叩きつけた。言葉にならない声に、誰もいらえを返さなかった。イリスは孤独だった。ずっとずっと孤独だった。
憎んだのは、運命でもなく、ましてや竜でもなかった。臆病も、自分を守れぬ弱さも、最初から呪ってなどいなかった。
真に憎んだのは、自分自身。全てを滅ぼし、自分しか守れない、圧倒的な強さだった。
「閉めてくれ」
言われるまま、イリスは後ろ手に戸を閉める。毛足の長い絨毯が足に絡みつくようだ。砦の本棟、頭領の部屋。立ったまま、イリスは口を開いた。
「何の御用ですか」
酷く無感動に訊いた。声へ感情を込めることができなくなっていた。数日を屍のように過ごしている。気が付かなかっただけで、水も食事もなしに生きられるとわかった。自分は化け物だ。心からそう思う。
「ひとつ、昔話をしてやろうと思ってな。何、老獪の気まぐれというやつだ」
竜狩りギルドの頭領、シャムリ=ルンバートはそう言った。その表情は相も変わらず読めなかった。気まぐれなど、この男に最も似合わない言葉だ。イリスは黙っていた。シャムリはそれを肯定と取ったか、あるいは否定を許さなかった。
「三十年ほど前のことだ。わしはミルナシアの貴族に私兵として雇われていた。もともとは南から来た貿易商の息子だったのだがな、没落して売られたのだ。しかし、武術は性に合った。気が合い、切磋琢磨できる親友にも恵まれた。ひとりの武人として、これ以上にない人生だった」
その話に何の意味があるのか、イリスにはわからなかった。わかろうともしなかった。何もかもがどうでもいい、つまらないことだった。
「それがある日、変わった。戦争が始まった。街の貴族連中が、本国が課す関税が多すぎると癇癪を起こしたのだ。わしも参加することになった。一国と一都市が争うなど、土台無理な話だ。そのうえ、貴族連中は戦術をまるで心得ていない。戦況は絶望的だった。わしらは追い詰められ、街のすぐ近くで大軍と対峙することになった」
シャムリは言葉を切り、手を組み直す。彼我の間合いを測るような目つきをしていた。
「その渦中で、親友が倒れた。抜きん出て強い猛者で、普段から奇妙に現実味のあるお伽噺を聞かせてくれる奴だった。助からないと見て、わしは悲嘆に暮れた。だが、起こったのはもっと悪いことだった。……彼は竜となった」
イリスは顔を上げた。シャムリは彫像のような無表情でこちらを見据えていた。
「傷口から肉が盛り上がり、それを塞ぐように鱗が広がって、体を覆いつくした。気が付けば、見上げるような竜の姿がそこにあった。……わしは知った。竜とは、在り方を歪められた人間の一族なのだ」
レアスのことを思い出す。彼にも申し訳が立たなかった。恩を仇で返してしまった。できることなら謝りたい。しかし、その機会は永遠に来ないだろう。
「彼は狂乱のままに暴れ、瞬く間に両軍を壊滅させた。わしは生き残りを率いて必死に戦い、何とかして彼に引導を渡してやることができた。帝国軍は撤退し、ミルナシアは都市国家として独立を果たした。そしてわしは、武人としての職を失った。講和に際して、帝国が私兵部隊の解体を要請したからだ。わしは誓った。貴族連中にこの街をほしいままにさせるまいと」
「……復讐、ですか」
シャムリにしては浅はかな理由だと思った。当然のように、シャムリは首を振った。
「不思議と怒りはなかった。ただ、気づいてしまったのだ。わしの方が、何もかもうまくやれると」
初めて、シャムリの声に熱がこもるのを感じた。竜狩りの時ですら見せなかった、奮い立つような声音。
「回収した竜の遺骸を二束三文で売り飛ばしたのも、帝国に代わって自分たちが関税を課すようになったのも、街道の整備を怠ったのも。私兵の解体にも応じるべきではない。いずれ軍備を回復した帝国から、好き放題に食い散らかされるだけだ。為政の問題に気付いたわしは竜狩りギルドを立ち上げた。この街を獲るために」
獣が喉笛へ跳びかかる時のように、シャムリは肩を低めた。
「……全て、思い出しているのだろう? 自分の力が引き起こしてきた過去を」
やはり、この男は何もかも知っていたのだ。イリスは目を細めた。
「銀の民について、詳しいことは知らないと言いましたよね」
「嘘ではない。古神話に学んだのはそれが全てだ。だが、推測することならできる。『銀の香の乙女』を竜が狙うのはなぜか。それを脅威だと知っているからだ。そして、お前さんは類稀なる導術の才能を示した。とすれば、結びつけることは簡単だ。そして、竜の脅威となり得るのは『落陽の刻』くらいのもの。もともとわしは、地に落ちた太陽のことを強大な導術だと考えていた。あれは、『銀の民』が竜を滅ぼすために放った光なのだ」
その様を思い浮かべようとする。竜に迫る神の怒り。それを操る人間と、竜との戦い。想像だにできなかったが、あり得ないとは思わない。その断片は、手中にある。
「ひとりの人間が、ましてや子供が扱うにはあまりに強大なその力、さぞや呪ったことだろう。誰も幸せにしない、何の役にも立たないと。生まれてこなければよかったとさえ、思ったかもしれんな。……喜べ。それを使ってやろうというのだ。わしは世界で唯一、お前さんの力を必要としている。この街の未来のために」
イリスは胡乱な目を向けた。滅ぼすことしか知らない力を、どう使うというのだろう。シャムリは続けた。
「長い時間をかけて、わしは力を蓄え、この街の構造を少しずつ変えていった。竜の素材を売って財を成すとともに、商品を右から左へ流すことしか知らないこの街に竜という特産品を作った。これによって商人らの利益が増え、貴族たちは農地収入よりも関税に頼ることが多くなり、商人へ頭が上がらなくなった。一方で、持たざる孤児たちを養い、教育し、次世代を担う人材を育てた。……クルムは、優秀な跡継ぎになってくれるだろう。
そして何より、竜狩りという名目で多くの武人を集め、育ててきた。その多くは竜狩りを知らない、人と戦うための軍隊だ。街の治安を守り、帝国を牽制するための。……それ以前に、貴族連中を打ち倒す先兵として」
何もかもが、布石。それがシャムリという男だった。しかし、イリスの力を欲するわけと、うまくつながらなかった。探るような視線を向ける。
「市政にも食い込めた。自警団は取るに足らない。商人や民衆の間でもギルドの人気は高い。もはや阻めるものは何もないが、最後のひとつが欠けていた。……大義名分だ。人々は変化を恐れる。変化には熱狂的な理由が必要だ。それこそ人智の及ばない、劇的な出来事が」
そうしてようやく、シャムリは本題に入った。緋色の長衣を翻し、竜狩りギルドの頭領が立ち上がった。
「神になれ、イリス=ヒューペリア。全てを滅ぼす力をもって、人々を導く、新しいミルナシアの旗となるのだ」
遠くから、鐘の音が聞こえてくる。武人たちの凱旋を告げる報せ。歓声と、それを覆い隠すような鋼の鳴き声がした。鎖へがんじがらめに縛られた巌のごとき竜が、牛馬に引かれて運ばれているのが見える。武人たちが続々と大門へと入っていき、竜の遺骸がそれに続く。その時が来た。イリスは小さくため息をついた。
辺りは一面の荒野だった。街の大門から、向かって右側に大きく離れた場所。乾燥地帯ということもあって、草木の類はほとんどなかった。手入れされていない、ぼろぼろの畑の跡がある。貴族たちの拠り所であった農地はすっかり顧みられなくなっていた。貿易が何にも勝る利益をもたらし、乾燥地帯で根気よく作物を育てさせるのも馬鹿馬鹿しいと思ったのだろう。作るよりも、買い付ける方がずっと楽だ。街の仕組みはとっくに歪んでいた。歪ませたのは、竜狩りギルドの頭領だった。
イリスは、シャムリの頼みを聞き入れた。破れかぶれになっていたのもある。しかし、やはりあの男は冴えていた。自分の力が必要だと言った。それで抗えなかった。イリス自身でさえ、自分の存在を認められなかった。ただ災厄を振りまく力はない方がましで、それを望むものなどないと思った。自分の全てを受け入れ、抱きしめてくれた友人は、自分の運命に、滅びの力に導かれて逝ってしまった。それが、答えだ。自分は世界の全てから否定されている。そう、思ったのに。
シャムリは自分を必要としていた。知る限り、あの男が間違ったことはなかった。だから本当に必要なのだろう。それも、戦いに駆り出されるなら断るつもりでいた。しかし、シャムリは言った。戦わずして勝つために自分の力が欲しいと。無用な血を流す戦いから人々を守って欲しいと。甘露な誘いだった。受け入れないわけにはいかなかった。
手筈はこうだった。竜を引き連れた武人たちは、中央広場で立ち止まる。そこでシャムリが演説し、民衆を説き伏せる。同時に、街に放たれた武人たちが一斉に貴族らの住居を襲い、身柄を確保する。イリスの出番はその後だ。誰もいない荒野で力を振るう。街からも見えるだろう。そして、その圧倒的な滅びの力は、ギルドに反抗する者の気持ちを萎えさせ、ギルドを支持する者を鼓舞するだろう。人々は神にも等しい力の前に、天の運命がシャムリに味方していると知るだろう。それがいかに計算され、着々と準備されてきたものなのか、露ほども知ることはなく。
今頃、シャムリは語っているはずだ。この街を導いてきたのは誰か。貴族たちがいかに愚鈍であったか。その声が聞こえるはずもなかったが、内容はよく知っていた。竜狩りから帰った武人たちを前に、同じ演説をしたからだ。その場にいたイリスも聞いていた。
「我々は、ついに天啓を得た」
厳かで、力強く。歴戦の武人としての貫禄は、その言葉を印象付けるのに十分すぎるほどだった。
「長らく、陰ながらミルナシアを支えてきた。竜の貿易でこの街を富ませ、孤児を拾い上げて育て、そして、竜すら打ち倒す最強の軍隊を作り上げた。我々は街に金の苗をもたらし、それが育つ土を耕し、それを守る壁を用意した。その長が、いかに無能であっても。我々のたゆまぬ努力で、街は大きく発展してきた」
槍を掲げて整列し、武人たちは静粛にその言葉を聞いていた。イリスは長衣を被り、荷馬車の裏に隠れるようにして耳を傾けていた。
「しかし、ついに天啓があった。表舞台に立つ時が来たのだ」
息を呑む音が聞こえた。ふつふつと湧き上がる、むずがゆい興奮が武人たちの間に漂っていた。
「竜が、怒りをほとばしらせて我らが砦を襲った。我々の家は、帰るべき場所は、脅かされようとしていた。強き我らといえども、入念な準備なしには竜へ立ち向かうことはできない。まして無人の砦では、竜の憤怒から逃れ得るはずもなかった。しかし、そうはならなかった。天より、神の光が舞い降りた。それは瞬く間に竜の巨躯を焼き尽くし、我らの居場所を守った。我々は、天から必要とされていたのだ。ミルナシアの街に繁栄をもたらし、ミルナシアの街を守るための力として」
男たちの、力強い歓声が上がった。色とりどりの竜鱗が、ギルドが有す武力の象徴である槍の穂先が、一斉に突き上げられた。それに応えるように、シャムリはこぶしを握り締め、声に力と熱を込めた。
「今こそ、我らがミルナシアを導く時だ! 我らの道は、神の威光に照らされている。我らに与する者はその庇護を受けるだろう。そして我らに仇なす者は、破滅の具現たる竜と同じく、神の光によって滅ぼされるであろう!」
街を揺るがして響く歓声に、イリスは我に返った。今がその時だ。荒野の真ん中で、イリスは胸の内の戒めをひとつひとつ解きほぐしていった。
(なんて、簡単なの)
それが酷く恐ろしかった。戒めから放たれた滅びの光は、あっという間に全身に満ち満ちた。無上の快楽。自分の体が融け出して、膨れ上がっていく。今やイリスは光であり、光はイリスであった。何も見えず、何も聞こえず、手を伸ばした場所はたちどころに無と化した。光の中で、イリスは孤独だった。光は、イリス以外の存在を許さなかった。
怪物にはならないでね。リトが言っていたのを思い出した。きっとあなたは苦しむはずだから。
怪物でなくて、何だと言うのだろう。自分はどこへ行くのだろう。いっそ、人の心を失ってしまいたかった。何もかも忘れて、怪物になり果ててしまいたかった。
(……ああ、そうだ。だからわたしは忘れていたんだ)
何度も繰り返していた。同じことを。心は幾度となく壊れていた。それでも、イリスは人間でいたかった。普通の娘として生きたかった。それを許すはずのない、運命を抱えながら。
力あるゆえに、力あるからこそ、イリスは無力だった。
ギルドによる革命は成った。シャムリはものの数日でミルナシアの統治体制を整え、街の一切を掌握した。混乱は起こらなかった。人々の生活は一切がそのままで、単に上の首がすげ変わっただけのことだった。人々は変化に熱狂するが、変化は齟齬を生み出すと決まっている。入念に準備をしていたのだろう、シャムリはまず、徹底してギルドによる新体制を安定させることに注力した。自分が権力から蹴落とした貴族たちには密かに竜の財を与え、それを元に商売を始めるようそそのかした。商魂たくましいこの街で、新参の素人がやっていけるはずがない。しかし、しばらく反抗勢力の目を逸らしておくことはできる。その間に改革を進め、統治を揺るぎないものにするのだ。
街の新たな紋章は、光芒とミルナの花を組み合わせたものになった。竜狩りギルドの砦はそのまま新体制の拠点となった。シャムリは自らを議長と名乗り、部屋の旗を取り換えた。槍に貫かれる竜は、もう必要ない。竜狩りは、この日々のための準備に過ぎなかったのだから。今や使い切れないほどの竜の素材を、シャムリは蓄えていた。
そんな砦の片隅で、イリスは人形のように暮らしていた。何も食べず、何も飲まず、動くこともなく、寝ているのか覚めているのか自分でも判然としなかった。時々クルムが様子見に来て、シャムリの改革について話していた。まるで興味が湧かなかった。自分の力で成ったという新しい街の情勢も、イリスには何の感慨ももたらさなかった。必要とされていても、誰も隣には立ってはくれない。滅びの力に見合う存在が、この世のどこにもあるはずはなかった。
ある日、緊張の面持ちでやって来たクルムに呼び出されることになった。幾日も動かさなかった足をほぐして、歩けるようになるまでにしばらくかかった。クルムは急いでいる様子だったが、決して手を差し伸べることはしなかった。イリスの為したことの、それが罰だとでも言うかのように。
足に絡む絨毯。頭領、もとい議長の部屋に招かれたイリスは、赤銅色の髪をして、黒い長衣を身に纏う英傑の前に立っていた。
「お前さんに、お客さんだ。……竜の群れがこの街に向かっている」
ついに、終わりの時が来たと思った。滅びの光で自身を満たしたとき、イリスは感じていた。まさにこの力こそが、『銀の香』なのだと。竜を惹きつける匂いなのだと。
「行ってくれるな」
さしものシャムリも、緊張の表情を浮かべていた。竜の一匹ですら、あらゆる天災に勝る脅威なのだ。それが群れとなって押し寄せる。想像だにできない悪夢だった。しかし、イリスはこれを救いだと思った。壊れてしまえる。それが心か、肉体かはわからない。だが自らを失って、苦しみから逃れ得る、絶好の機会だと思った。
返事もせずに、ふらふらと部屋を出ていく。そのまま街を出ればいいだけだった。望まずとも、自分は竜を呼び寄せる。ただ誰も巻き込まない場所へ行くだけでよかった。
**** *****
「よかったのですか?」
クルムが口を開いた。医術と導術に通じ、自分の知識と策謀を貪欲に吸収しようとする見上げた若者。その思惑を試すために、問いかけた。
「どういう意味で言っている?」
「二通りです」
その返答で、理解するには充分だった。強力な手駒をみすみす失ってもいいのか。そして、これ以上あの少女に何もしてやらないというのか。若者は優しく、冷徹になり切れないところがあった。その熱さが老いた自分にはない弱さであり、強さだった。
「他に、どうしろというのだ」
クルムは黙った。決して叶わないことに拘泥し、思い悩む若さ。しかし、それこそが思いがけない可能性に気付く力なのだ。自分にもかつて、こんな時があった。
「竜への矛を、我々は捨てた。そもそも、今までがうまくいき過ぎていたのだ。彼らは神が生きた時代でさえ、破壊の象徴だった。矮小な我々が敵うはずもないのだ。どこかで賭けはやめるべきだった。今がその時だ」
言い返せない様子だった。聡いクルムのことだ。それくらいのことは言わずとも理解している。ただ、若さがそれを認められないでいる。
「奇跡は、何度も起こらないからこそ奇跡なのだ。神の光は刹那に消え、それゆえに永遠と語り継がれるだろう。何、どうなろうと我々に危害が及ぶことはない。竜の狙いはあくまであの少女だ」
「今を生きる我々が、神代の過去に生きる存在をどうにかできるはずもない。……そう言いたいので?」
クルムが言った。八割は合っている。しかし残りの二割が致命的だった。首を振った。
「違うな。今を生きるのはわしだけだ。お前たちは未来を生きていけ。わしが、神代の過去の者どもが、造り上げた礎のもとにな」
クルムは息を呑んだ。鋭い目でこちらを見た。当たり前だ。心の内でつぶやいた。まだ師を越させるわけにはいかん。せめて自分が老いさらばえるまでは、追いすがってこい。
「……あなたに、私たちに、何もできないと言うのなら」
クルムは誰に聞かせるでもなく言った。藍色の目が、遠くを見ている。時折この若者は憑かれたように恍惚とした表情をすることがあった。
「同じ過去の存在しか、彼女を救えないのでしょうね」
過去の存在。自分の人生を脅かし、覆りようもなく変えてきたもの。慎重に手を伸ばして、危険を冒しながら利用してきたもの。その関係も今日で終わりだ。やっと、今を生きることができる。
沈黙が部屋を満たしていた。それはかつて竜と変じた親友への、時を越えた黙祷なのかもしれなかった。
天を、地を、竜が埋め尽くしていた。数えることをイリスは諦めていた。指の数ではとても足りなかった。全ての邪なるものを集めた瞳が、いくつもこちらに向いていた。かつて恐れたその闇が、今は取るに足らないものだった。
――どうして。
竜たちが鬨の声を上げた。咆哮はあらゆる生を許さぬ呪詛となってあまねく響き、天地を揺るがしてその境を曖昧にした。氷雪が、稲妻が、光をほとばしらせた。風が、岩が、轟音を鳴らした。火炎が、汚泥が、死の匂いを振りまいた。ひとつひとつが天災に等しい竜の力が、混沌となって辺りを満たした。そこはもう、この世ならぬ場所。天と地の別もなく、死と生の別もなく、この世のありとあらゆる理から外れた、別の世界だった。
――わたしはただ、生きていたいだけなのに。
枷が、自然と解けていった。怒りが胸を満たしていた。少しずつ、光が胸から染み出してきた。うつむいていたイリスは、激憤を露わにして竜の大群を見上げた。
「どうしてよ! なんで生きていちゃいけないの? わたしだってこんな力は要らない。欲しいと願ったこともない。なのにどうして、わたしを追い詰めるの? どうしてわたしを殺そうとするのよ!」
滅びの光が、この世のあらゆる存在を許さぬ神々の力が、むくむくと膨れ上がった。皆殺しにするのも、それほど難しいことではないと思った。生きるために。忌まわしい過去を焼き尽くすために。あとはこの力を解き放つだけだ。
しかし、できなかった。
竜たちの咆哮が、ほとばしる光が、轟音が、生を許さぬ香りが、弱まった。空を埋め尽くし、地を埋め尽くし、イリスの何倍、何十倍もの巨躯を誇る竜たちが、鳴りを潜めた。
竜たちが、神代の時代から恐れられた破滅の象徴が。信じられなかった。こんな、こんな矮小な人間に。自分の身一つ守れなかった少女に、愛した誰をも助けられなかった少女に、竜が恐怖していた。
そして、気が付いた。
(わたしが竜を恐れるように、竜はわたしを恐れている)
たくさんの竜を殺してきた。巻き添えにした人間の数よりは少なかったが、確かに多くの竜を殺してきたのだ。恐れるままに。生きたいがために。竜も同じだった。自らの存在を脅かす敵として、竜は自分を恐れていた。生きたいと願っていた。自分が竜を恐れるのと、生きたいと願うのと、全く同じようにして。
滅びの光は萎んでいった。怒りもどこかへ消えてしまった。後には深い喪失だけが残った。自分にはもう、傷つけることはできなかった。戦いは終わらない。悲しみはなくならない。恐怖は消えない。望まれぬ死は尽きることがない。竜は自分で、自分は竜だった。だからこそ、決して互いに相容れることはなかったのだ。
――死にたく、ない。
むき出しの少女として、贄として、イリスは竜たちの前に立っていた。それでもなお、望まずにはいられなかった。本当に哀れで、救いようのない傲慢さだと思った。生きること。それを望んだ。多くの罪を重ねながら、ついに戦うことを諦めた存在が、生き残るはずがないというのに。
再び、竜たちの力が満ち満ちていった。ひとつの世界が形作られていった。ただ、イリスはそれを眺めるだけだ。目は逸らさなかった。受け入れようとしていた。頭の芯が焼き切れるような痛みは、もう感じなかった。
抗う力を失った少女へ、一斉に光が放たれた。
引き伸ばされた緩慢な時間の中で、イリスは無意識に手を伸ばした。光で塗り潰された世界の向こうへと。今まで、こうしたことがあっただろうか。まるで、誰かに……
そうしたことは、一度もなかった。短くも長い人生の中で、ただの一度もしたことがなかった。
少女は無力だった。幾度となく危機に陥るたびごとに、そうするだけの理由があった。しかし、いつだってイリスは、自分の力で立ち向かおうとした。巻き込むわけにはいかないから。巻き込まれた存在はすべからく、運命の渦に呑まれてしまうから。
だが、そうでない存在がたったひとつだけあった。求めずともいつだって窮地に現れ、救ってくれた存在が。神代に連なる運命にさえ抗う力を持った存在が。確信があった。来てくれると。
「助けて」
だからこそ、イリスは初めてその言葉を口にした。手を伸ばして、強く求めた。
黒い稲妻が、光を裂いた。
漆黒の翼が疾走し、艶やかな夜の闇を振りまいた。それは剣となり、盾となり、光の混沌を開闢する。鏡の色をした瞳が、自分と同じに運命を抱えた瞳が、まっすぐにこちらを見た。伸ばした手が握られる。硬く頼もしい、武人の掌だった。
体が持ち上がった。気付けば空にいる。澄んだ薄青が、誰かの瞳によく似ていた。
冷たい風が吹き付け、耳元に音を感じた。竜すら追いつけぬすさまじい速さで、口を開けば舌を噛んでしまいそうだ。眼下の景色が矢のように流れていく。ミルナシアの街は、もう見えなかった。
「動くなよ。落っことすぞ」
顔を見ようとして、怒られた。確かめなくても明らかだ。あどけなさに深淵を宿す声。レアス=イスチェリーが、翼で風を切っていた。
「飛ばすぞ。しっかり捕まってろ」
言うなり、逆風が強くなった。体を支える腕をつかむ。強靭でしなやかな筋肉が、がっちりとイリスを抱きとめていた。イリスは安心して目を閉じる。これまでも、レアスは必ずイリスを助け出してくれた。
しばらく飛んで、レアスは急降下する。鬱蒼と茂る森が見えた。大きく翼を羽ばたかせて、枝葉を突っ切るようにして飛び込んだ。
土を踏みしめても体幹がふわふわとして、まだ空を飛んでいるような心地がした。
「これを被れ。『銀の香』を覆い隠す効果があるらしい」
レアスは、腰に巻き付けていた衣をほどいて、こちらによこした。艶のある白銀の衣。布にしてはやたら軽く、それでいて輝きは金属のようだ。自分の髪を織ったような布だとイリスは思った。
「どこでこれを?」
「話は後だ。早くしろ。追いつかれるぞ」
そう言うので、イリスは急いで身に付けた。ギルドで着ていた長衣のように、頭のところが被れるようになっている。
着終わると、レアスが顔を近づけてきた。どきりとして、目を閉じる。息遣いが耳を打った。
「……確かに、消えたな。行くぞ」
『銀の香』を確かめたのだと、言われてようやく気が付いた。勘違いした自分が馬鹿みたいだった。手を差し出されて、それを握る。たちまち持ち上げられて、再び空にいた。竜の姿が見えないのを確認してから、レアスは速度を緩め、高度を下げる。喋っていいという合図だった。
「あの時は、ごめん。わたし、どうかしてたの」
「こんがりと焼いてくれたな。だが、謝る必要はねえ。おかげで俺は翼を手に入れた」
気を遣うでもなく、レアスは本気で言っているようだった。背中から生え、ばさりと風を叩く翼は、レアスの長刀と同じ色をした薄く大きな皮でできていた。羽毛はなく、代わりに網目状の模様が走っている。
「……どういうこと?」
「竜がどういう生き物か、話さなくちゃならねえな」
イリスは静かに待った。レアスがゆっくりと口を開いた。
「竜は、神代の時代に人間を元にして造られた生き物だ。その末裔である竜族は、各地にひっそりと集落を作って暮らしている。何事もなければ人間と変わりなく生きるが、深い傷を負うことで生存本能に刺激を受けると、その傷が治る時に竜としての姿を現す。集落のうち何人かがそうやって竜となり、神代からの敵である『銀の民』を探して、さまよっているんだ」
レアスは言葉を切った。声が低くなるのがわかった。
「俺は、素質があったらしい。十歳のころ、同族の手で傷をつけられた。しかし、何度傷ついても竜にはならない。人の姿のまま再生するだけだった。竜に生まれ変わる儀式は、拷問に変わっていった。蘇るたびに力が満ちるのがわかった。しかし、鱗のひとつも生えやしなかった。俺は耐え切れず逃げ出して、追手の竜を殺しながら旅を続け、最後にはギルドに拾われた」
自分の人生と重ねながら、イリスはレアスの話を聞いていた。イリスもまた、各地をさまよって生きてきた。よくぞ巡り合ったものだと思う。
「あの夜のこと、俺はお前が放った光を背中に受けた。今までにない苦痛だった。必死にその場を離れ、見ず知らずの場所で泥のように眠った。気が付いたらこの通りだ。どんな傷でも竜にはならなかった体から、翼が生えていた。俺は自由を手に入れた。お前のおかげだ」
感謝のつもりか、わき腹をぽんぽんと叩かれる。自由。その二文字が、やけに胸をくすぐった。
「お前もだ、イリス。お仲間から迎えが来ている。この衣も、奴らに託されたものだ」
銀色の衣をつまんで、レアスは言った。
「仲間?」
イリスはいぶかしむ。心当たりはなかった。
「『銀の民』だ。俺を助けた礼として、竜の群れの中からお前を連れてくるように頼まれた。お前がいると手紙で知らされていたらしい。差出人は、リト=カッシュ。名前に覚えはないか」
イリスは息を呑んだ。忘れるはずがなかった。そして、納得した。リトは全て知っていたのだ。涙がこぼれた。
「……あの時の、友人だったか。すまなかったな」
イリスは泣きながら、大きく首を振った。レアスのせいではなかった。全ては自分と、その運命のせいだった。あの夜リトが死ななくとも、いつかどこかで別れはやって来ただろう。それほど、イリスを縛る運命の鎖は強固だった。
レアスはゆっくりと、柔らかい風の流れる草原へと降り立った。赤茶けた細い道が続いていて、緩やかに蛇行しながら地平まで続いていた。
「ここを道なりに歩いていけ。そうすれば、迎えのところに辿り着く」
「あなたは?」
「もらった翼でどこへでも行くさ。助けてもらったとはいえ、『銀の民』に付いて行っても仕方ないからな。奇しくも俺たちは、互いに滅ぼし合う存在だ」
感触を確かめるように、ばさりと一度羽ばたかせる。伸ばした腕より大きいそれは、まるで夜空を広げたように見えた。
「じゃあな。達者で生きろよ」
言って、レアスは飛び立った。手を伸ばしかけて、引っ込める。そのうちに、黒い翼は見えなくなっていた。
一面に若草が絨毯を作って、そよ風にさやさやとうねっている。その中を、イリスはゆっくりと歩いていた。
リトが手はずをし、レアスから受け取った衣。『銀の香』を覆い隠すそれは、草のかんばしい風を孕んで、ひんやりと気持ちが良かった。耳をすませば、唄い交わす蜜蜂の声が聞こえる。かつて、何度も夢に見た光景。たちまち紅蓮の炎に呑まれたそれが、今はのどかな草原のままでいる。
しかし、イリスはひとりぼっちだった。
歩いていけば、迎え入れる人がいるだろう。ただ、それで本当にいいのだろうか。『銀の民』の仲間たちは、自分の力を求めている。竜を滅ぼすための、神々の光を。
イリス自身は、それを望んでいなかった。でも、リトが仲間を呼んだのだ。自分は一族としての歴史を知らない。それを知る前に、死の連鎖にいざなわれてしまったから。それが一族としての役目なら、果たすべき使命なら、従わなければいけないのか。
(……違う、か)
イリスは首を振った。最期にリトは言ってくれた。自由に生きて、と。
頭に被った衣を、イリスはそっと持ち上げた。銀色の髪が風に揺れた。それは星の光を束ねたようにさえざえと輝き、さながら鋳融かした銀をそのまま宙に流したようだった。
そうして、待った。漆黒の翼が、自由が、風を切って現れるのを。
「どうしようもない奴だな。お前は」
銀の香を嗅ぎつけて、竜の少年が舞い降りた。イリスはちらりと笑って、山吹色の目を細めた。
「あら、お互いさまでしょう? 一族の使命を忘れた、はぐれ者どうしよ」
「違いねえ」
レアスがはにかむのを、初めて見た。慣れないのか、ぎこちない。これからたくさん笑わせてあげようと思った。
二人は飛び立った。神の光によって生まれた、夜空の翼で。
「人には、頼っちゃいけないのだと思っていたわ。一度でもわたしに触れた人は、いずれ命を落としてしまう。……でも、違ったのね」
イリスはつぶやいた。レアスは鼻で笑って、言った。
「違わないさ。俺は竜だ。そうそう他の奴に頼らせるものかよ」
ひときわ力強く翼を鳴らす。頼もしい限りだった。レアスもまた、独り言のようにつぶやいた。
「戦って殺すことでしか、俺は生きられなかった。逃げる間も、竜狩りをするようになってからも。苦しかった。それが当然だと思っていた。……違うと教えてくれたのは、お前だ。戦うことで、誰かを守れると知った」
抱えられる手に、力がこもった。イリスもそれを握り返した。レアスがふっと息を漏らした。
「銀の民も、銀の香も、竜を滅する光のことも、全部ただのお伽噺だと思っていた。……違ったんだな。お前はこうしてここにいる」
日が暮れるまで、そうして飛んでいた。イリスは唐突に言った。
「……ねえ、『銀の香』って、どんな匂いなのよ」
「それを訊くか。……なら、嗅がせてくれよ」
レアスは苦笑して、ゆっくりと舞い降りる。地に足付けて振り返ると、闇夜に溶け込むレアスの姿があった。イリスは微笑んだ。鏡の色をした瞳へ、山吹色が差し込んだ。
唇が触れる。イリスは竜の温もりを知った。
塗りこめたように黒い夜空には、銀砂をまいたような星々が瞬いている。そこへ滑り込んだ漆黒の翼と、銀に輝く髪は、どことも知れず、気ままに空を渡っていく。
その姿を見ているのは、闇夜を丸く切り取った、真白に光る月だけなのだった。
銀の香 八枝ひいろ @yae_hiiro
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