喋るねずみは夢かうつつか――少女の小さな冒険の物語

『末っ子』のエリザベスが兄の連れてきた恋人アリシアに反感をいだき、アリシアを陥れるために魔物を呼び出そうとする短編です。
甘えん坊の『妹キャラ』エリザベスには思春期ならではの気難しさがあって、彼女の世界はシンプルなような複雑なような、ローティーン特有の素敵なむずむずがありとても可愛いです。
彼女がアリシアにいだく感情もなんだか可愛らしくて、呪ってやる!なんて言ってもちっとも恐ろしくはないんです。
でも、彼女の純粋さは魔物を呼び出すには充分だったのかもしれない。
ねずみはひょっとしたら魔法の世界の誰かが空気を呼んでエリザベスのところに遣わせてくれた存在だったのかもしれません。あるいはねずみ自身が。
エリザベスの繊細な心は守られ、すべてはエリザベスの胸のうちに秘められたまま。
最後はどうやら一歩を踏み出せたようで、ほっとしました。
懐かしい気持ちになれる、ちょっぴりファンタジックな作品でした。