エピローグ
帰りの電車の中、最初に寝ついたのはゆあんだった。「アホな加工して送ってやろう」とその写真を撮っていた優も、二つ駅を過ぎたあたりでこっくりこっくりとやり始めた。
窓際の席の里々は、肘枕をしたまま器用に眠っていた。強い日差しがもろに差し込んでも、起きる気配がない。二海と優がブラインドをおろし、影になるようにした。
二海と桃は、何を話すでもなく隣同士で席に座っていた。スマートフォンの画面は見たくなかったし、ブラインドはおろしてしまった。規則的な電車の揺れに身体をまかせているのが心地よかった。
余ったお菓子を、帰りのおやつにともらってきていた。思い出してバッグから取り出し、二人はそれをわけて食べた。
「明日から二学期かあ」
「何か変な感じ。……あそうだ、プールいつ行く?」
「あー、忘れてた。次の土日、晴れるかなあ」
とりとめのない話をしている中で、桃の返事がだんだん遅くなっていった。少しすると、頭を少しこちらに傾け、桃は完全に寝入ってしまった。
二海は口の中のチョコレートを飲み込み、自分も目をつむった。東京に帰って、明日からまた学校だ。そう考えても、もうだいじょうぶだった。つぎはー、という車内放送の声を、二海は夢うつつに聞いた。
ハッカーとチョコレート 鶴見トイ @mochimochi
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