愛すること、束縛すること。わがままを言うこと、素直になること。

滅びゆく種族、銀色のムテの血を未来につなぐため、
霊山にこもって祈りの日々を過ごす巫女姫エリザ。
つがうべき相手であり、想いを寄せる相手でもある
最高神官のサリサとの距離が少しずつ近付いていく。

独特な成長と老いのあり方を呈するムテの一生と、
長命と祈りの種族ならではの死生観が描かれる一方、
死にかけた幼子マリを巡るエリザの率直な思いは、
読者の共感をいざない、物語の深みへと導いていく。

あまりに強く夢を見てしまうエリザの無邪気さと、
それによって己の望みを直視してしまうサリサと、
死生観も感情も放棄したはずの仕え人たちの変化と、
霊山にひたひたと訪れようとする試練と決断の時と。