銀のムテ人 =第一幕・下=

わたなべ りえ

今までのおはなし


 銀のムテ人は、滅びゆく長命種族。

 霊山で祈る最高神官の尊き血を残すため、エリザは巫女姫として選ばれた。

 だが、未熟すぎる彼女には、巫女姫としての仕事も、最高神官の子供を作ることも、重たすぎた。

 そんなエリザの心の支えになってくれたのは、他ならぬ最高神官サリサ・メルその人だった。

 仕え人たちの冷たい態度に傷つきながらも、エリザはサリサのために、巫女姫としての責務を果たそうと、必死に努力する。


 最高神官の仕え人フィニエルは、最高神官サリサの裏の顔を知っていた。

 立派そうに見えて実は小心者で甘えっ子の彼が、ひとめぼれでエリザを選んでしまったことを見抜いていた。

 そして、サリサが力の及ばないエリザを人知れず助けることで寿命を削っていることを、快く思わなかった。

 最初は、お互いのためにエリザは霊山を下りるべき……と考えていたフィニエルだが、徐々にサリサの一途な気持ちに心動かされてゆく。

 そして、巫女姫の仕え人となり、エリザを指導し、二人の架け橋になってゆく。


 実は、サリサは最高神官になるために霊山に戻る道中で、エリザに会っていた。

 その頃、サリサはまだ子供で、重責に押しつぶされそうになって、泣いていたのだ。それを、蜂蜜飴をくれて、慰めてくれた少女がエリザだった。

 その後、サリサは最高神官として立派に成長した。

 巫女姫選びの時、エリザと再会したサリサは、自分を励ましてくれた少女が、あまりにもか弱い存在だったことに驚く。

 そして、心を奪われてしまい、能力的に劣るエリザを巫女姫として選んでしまったのだ。


 サリサは、エリザがくれた蜂蜜飴の最後の一個を見せて、好きだから選んだのだ、と告白しようとしていた。

 だが、蜂蜜飴を見たエリザは、故郷のことを思い出し、泣き出してしまう。

 巫女姫としてやっていけそうな手応えを感じている中、故郷の母の夢を見る日が続いていて、精神的に不安定になっていたのだった。

「最高神官に選ばれたのだから、巫女姫としてやり遂げられる」

 能力以上のものを求められ、故郷も捨てて頑張るエリザに、サリサは自分の想いを封印し、故郷に帰るその日まで、彼女を守ろうと誓うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る