プログラミングやら、オブジェクト指向やらと、あらすじに取っつきにくい言葉が書いてあったんで身構えて読んでみれば、ただの取り越し苦労。そんな心配は無用でした。
強大な【影の王】に立ち向かう唯一の術は、貧弱な魔法弾のみ。
それでも試行錯誤しながら対抗手段とするべく、苦労を重ねる魔法研究者の生き様を描いた作品として、特別な知識なしでも楽しませていただきました。
あくまでもそこに用いられた考え方が、プログラミングに沿っているというだけ。
もちろんそういった知識を持っている方が読めば、より一層楽しめることでしょう。
ですが……。
情感たっぷりに描かれる、大規模戦闘の迫力。
様々な思惑を持った、主人公周辺の登場人物たち。
そして簡単には運ばない、紆余曲折の魔法強化への道。
これだけ詰まってるんですから、そんな楽しみは副次的なもの。
純粋に物語を楽しむだけで、充分お釣りがきますよ。
あくなき挑戦。好奇の槍は光り輝き闇を貫く。
主人公の挑戦。どちらかと言えば欠点の多い感じの主人公が、自分の長所というべき好奇心で挑戦を繰り返していきます。
その先に何があるのか。
そして、正体が全く不明な影の王。まさしく影のごとき存在にして、圧倒的な力で主人公たちを苦しめます。その中で主人公は考え、失敗し、くじけそうになりながらも、チャレンジし続けていきます。
その姿に感動を覚えることでしょう。
完璧な人間はいない。そして、それぞれが得意なことは違っている。そんな人間模様で描かれている本作品は、失敗を恐れずに前に進む勇気が、仲間との絆を繋ぐ一つだと教えてくれる物語かもしれません。
じっくりと堪能することをお勧めします。