主人公は殺し屋。ヒロインはロボットと人の間に生まれた存在。
本来なら噛み合うことの無い歯車が結びつけられ、運命という名のギアが加速するーーと、ありきたりな謳い文句を載せるならこうなるのでしょうが、本作のギアは違法改造でもされているのかというくらいの加速度で回り出します。
なにせいきなり最初からクライマックス。この結論に至る道程を追うのが、とても楽しい。
情報量が多くなりがちなSF作品において、まるで洋物映画でも見ているような爽快感を味わえるのは、ひとえに作者の文章力の高さと、登場人物達の軽妙洒脱な言い回しの巧さにあるのでしょう。
「全員口が悪い」のタグに偽りなく、出てくる人物は誰もが口が悪い。ただ、それを褒め言葉にしたくなるような「洒落た」言葉回しは、永遠に読んでいたくなるほどです。
1話の量が少ないのでサクサク読め、気がついたら前述したように加速しまくった歯車から目が離せません。
だからといって世界感が薄いわけではなく、むしろ濃い。濃厚なSF世界をたっぷりと堪能できるので、気がついたら脳内に街の風景や人物が行き交うところが浮かんできます。
伏線の張り方、回収の仕方。その結末としてあるべきところに歯車が組み込まれ、物語を美しく組み上げていく様は圧巻です。
一度読み出せば最後までトップギアに入りっぱなしの本作、是非とも読まれることをお薦めします。
少女は殺し屋に依頼する。
「私を殺してくれる?」と。
現代でも新宿や池袋と言えば人が集まり、混沌とした様相を見せる。
それは、恐らくこの先も変わらないのだろう。
少女が持ち込んだ依頼は不可能にも思われるが、そんな依頼をこなすために、アンドロイドとヒトが並んで闊歩する混沌とした街を、互いに悪態をつきながら駆け抜ける。
皮肉の応酬は非常に軽快でノリもよく、読者を引き込んで離さない。
だからといって何でもありのコメディーショーで終わるわけでもなく、中盤を越えた辺りから、それまで断片のように散らばっていた人々の過去と思惑がすっとまとまってくるのが圧巻だ。
これを読んだ貴方も、組み込まれた歯車の一つとして、一読者としての役割を果たすといい。
※chapter.8時点でのレビューです。
月並みに言って、涙あり、笑いあり、アクションあり、ハードボイルドあり、毒舌あり、雰囲気あり、センスあり、遊びあり、ネタあり……
月並みに言えません。
活字でやるエンターテインメントのすべてが、ごった煮で煮えくり返って、噴きこぼれんばかりの勢いで迫って来る、強烈な作品です。何がいいって、文章から、作者がノリノリで書いている快活感がひしひしと伝わってくるところです。
エンターテインメントはこうでなくてはっ!!
とりあえず、読んでください。
ぼくはお金払ってでも読みたいです。
※完結まで読んだので追記。
最後の最後まで、息つく暇もなく楽しませていただきました。やはり、エンターテイメントはこうでなくてはっ!! という作品でした。
とりあえず読んでいただきたい。
ぼくは仮に売られていたとしても買いたいです。