父には内緒の新しいペット

五人家族で唯一の男性であるお父さんが主人公の本作品。一人だけ男性のせいか他の家族が仲良く話しているのに一人オンラインゲームをやっている姿が寂しい……。

そんなお父さんが絶賛ハブられ中の会話の中で最近しばしば出てくるのが『ポチ』という単語。お母さんの趣味で既に家には色々なペットがもういるが、お父さんはそんな名前のペットを飼った覚えはない。よくわからないまま娘たちの会話に耳を澄ますと、何やら『クトゥルフ』とか『サンチ』とか奇妙な単語も聞こえてきて……。

自宅の中から生臭い臭いがし始め、どこからかともなく水音が聞こえてくるようになり、家の中はどんどん不穏な雰囲気を醸し出していくのだが、そんな不穏さとは裏腹に娘たちの会話のテンションは全く変わらない。

明らかに異常なことが起きているのに、お父さんにちょっとだけ隠し事をしているという感じの妻と娘たちのリアクションが妙に生々しくて、この作品独自の奇妙な空気を作り出している。

ホラーというには明るすぎで、ギャグというにはあまりに淡々としている、奇妙な味と評するのがピッタリの一作である。


(「さまざまなペット」4選/文=柿崎 憲)

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