1-8)完結後の振り返り

 作中最初に決めたことと変わったことを簡単に。それと明記しなかったキャラクターについても少し触れてみたいと思います。


物語の流れ:

 実際は「都合よく使われる横須賀」を五話まで書きながら、その中で横須賀がどう感じるかをメインに作ることになりました。二話までがキャラクター紹介、三話四話が都合よく使われた結果横須賀にとってしこりになる結末になること、五話がこのままでいいのか横須賀が考えるきっかけとなっています。そして六話で一度「君は君でいいよ」という支援者がいる表現、七話で横須賀が動き出す姿、八話ではそれを是として最後にしようとする山田、そして九話でさようならできずに秘密を暴く横須賀、十話で拒否のシーンまで物語総まとめとなった形ですね。

 このあたりは書きながら「どれくらいがちょうどいいか」というのがネックでした。山田を酷い人と最初書こうとしたのですが、いやこの人の精神はもっと芯がはっきりしていると思ったので進みやすい道を整備した形です。

 いかに相手を認め、自分だけで解決しようとし、不器用なのか。その為偽装するにしても語りすぎない点があり、最初の予定だった「サツキ」という架空の依頼人(でありながら山田の因縁の事件であるので本当に依頼人はサツキ(山田)であるということ)もなくしました。ミスリードを誘いやすく読者にイーブンでは無いだろうという点も理由ですね。


山田太郎:

 当初よりもはっきりと芯が通りました。一話を書く時に「悪い人に見えるように」と書こうとしたんですがどうしても筆が運びにくく「徹底した人」と結局書くことで一話がするする進んだためです。

 彼女(逸見五月)の精神として復讐はなりえないだろうと、「ケジメ」という形に変えたりしたのもそのひとつです。この人は高潔で、優しく、純真で、ある種楽天家では無いだろうかと言うぐらい世界と道理を愛した少女で、ショックな事件があったとき人のせいにするより自分を責めるだろうという考えで変えました。山田太郎の台詞で嘘はありますが、できるかぎり少なくもしました。それは山田太郎の性質でもあり、同時に読者に謎を提示する立場だからです。

 また、最初にあった敵役への淡い恋心はややこしいので削除しました。そういうものを混ぜるよりも、もっとはっきりとした義務感、親戚あたりの友人としての距離がいいかなと思ったためです。それに後述しますが、逸見五月を愛した人が出てきますので(しかし彼の気持ちはそういう意味で彼女に伝わりませんが)、ややこしい関係はできるだけ減らすためでもありました。


横須賀一:

 ほとんど変わりありませんが、山田の正体を暴くときに言う台詞が変わったりしています。格好良く鋭くと言うより、彼は懇願だろうと思ったためです。また、彼の性格上山田に逆らう時の言葉選びも変わりました。しかし行うことはあまり変わっていません。彼の成長譚ですので当たり前かもですが。


叶子:

 作中で横須賀の対とさせるための設定です。親の愛を得られず冒涜的な儀式という形で性的虐待を受け、クトゥルフ神話の生物に関わりながら生きた子供。名前の無い子供という意味での一とは逆に、叶える子という意味でしか存在できなかった子です。

 彼女の狂気や危うさ、無邪気さ、美しさ。それらを横須賀と引き合わせながら、子供が狭い世界からたった一歩でも足を踏み出すように。そんなお話でしたので、彼女はもしかすると横須賀が間違えたかも知れない形であり、同時に横須賀が過去の自分を救うために手を伸ばす相手として生まれたキャラクターです。


日暮雨彦:

 リンや平塚については触れたので刑事のリーダーであり重要人物だった彼を説明しておきます。彼は届かない人で、しかし想い続けた人でした。

 忘れないこと、しかし押しつけないこと、それでいて諦めなくていいこと。人と人が繋がる話として重要人物です。

 彼の表情は先天的に変わらない、感情と表情筋が結びつかないという中々特殊な設定です。これは山田太郎が逸見五月と知る唯一の人物として、またそうだと気付いても山田が気付かなくて仕方ないとするためにできた設定であり、同時に「日暮が逸見に恋した理由」にもなった、作ると決めた途端するすると設定が決まったキャラクターでもあります。

 逸見五月の倫理を愛した人が背筋を伸ばし市民を守る姿をさらすことで、正義を山田が見失なわかったと言う巡る形がある為、彼の倫理感や行動は決めやすかったです。山田のために決まったことが多いキャラクターでもありました。


 他にもたくさんキャラクターがいますが、なんだかびっくりするくらい長いですね。このあたりでおまけはおしまいにしておきます。

 もし読まれていない方でお話が気になった方が読んでくださったら、非常に得がたい幸いだと思います。といっても、長いので興味があったらとしか言えませんし、がっつりネタバレしましたので立てたフラグを見つける形で楽しんでいただくことになりますが。


 以上、長々としたまとめですが、お付き合いくださった方有り難うございました。


 小説を書くのって、楽しいですね!

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