描き、愛し、希う。君という奇跡が香り咲く、一瞬一瞬。

それぞれ病気を抱えながら、運命的に惹かれあった少年と少女。
描くことに希望を見出していた彼に、「私を描いてほしい」と彼女が願う切実な理由。そして、崩れゆく世界の先で彼が見る景色とは……それは、ご自身で確かめてもらうとして。

閉じた世界と限られた時間の中だからこそ、愛する人を、その人といる景色を全身全霊で感じよう。そう感じさせる筆致がお見事でした。
あなたが自分の世界の全てだと。あなたとの一瞬が、ずっと続きますようにと。
特別な背景がなくとも、そんな風に誰かに焦がれるような感情を経験している人は少なくないと思います。僕が思い出したのは、そんな感情でした。
そして。強く純粋な想いが芽吹かせる奇跡だって、信じていいじゃんって。春色の気持ちになれる一編でした。