第40話
エピローグ
目的は俺個人の取り扱いに極めて困る礼のブツ、パンツの返却である。部屋に置いておいてルゥやアナスタシアにイリスに見つかったらややこしいことになると思うと、肌身離さず持ち歩くしかない。
しかし、肌身離さず持ち歩くのは持ち歩くので心労が溜まるわけで……。下着屋では窃盗と間違われるから受け取れないという理由で返却が拒まれたが、自室なら流石に拒む理由はないだろうという算段である。
俺はメリッサのパンツをそっと懐に忍ばせて、通路で人目を気にしながら彼女の部屋のノックをした。すると――、
「はーい、どうぞ。まあ、入ってくださいな」
メリッサが出迎えてくれる。
「ああ、悪いな。用が済めばすぐに帰るから」
「まあまあ、ゆっくりしていってくださいよ。お見せしたいものもありますし」
「見せたいもの……? まあ、いいや。とりあえず先に俺の用事を済まさせてくれ」
やべ、改めて渡すとなると、なんか緊張してきた。
「はい、どうぞ」
メリッサは二つ返事で了承してくれる。
「じゃ、じゃあ、いくぞ」
ドキドキ。上ずった声で宣言した。
「はい、ですからなんですか?」
「パ、パンツを返させてください!」
一世一代の口説き文句を記したラブレターを取り出すように、俺は懐からメリッサのパンツを取り出して両手で丁寧に差し出した。
「あー……」
メリッサはすぐには受け取ってくれない。
「下着屋じゃ断られたけど、ここでなら受け取ってくれるだろ?」
頼む。俺の心の荷がどれだけ重いのか、忖度してくれよ。
「んー、お断りします」
すっごく良い笑顔で断られた。
「なんで!?」
「だってそれもう、たーくんの色んなものが染みこんじゃってますよね?」
「染みこんでねーよ!」
大事に毎日肌身離さず持ち歩いて保管していたわ!
「でも、実は新しい下着を買ってきたばかりで、下着はもう間に合っているんですよね。ほら、見てくださいよ。ちらっ!」
メリッサはそう言って立ち上がり、スカートを持ち上げるそぶりを見せる。
「っ!?」
俺は咄嗟に目線を逸らした。
「ほら、見てくださいよお、ほらほら。ちらっ、ちらっ」
そう言われると男の性というやつで、脇目で見てしまう。
そしたら、別にスカートをめくっていたわけではなくて、スカートの前で手にした下着をショーツの部位に重ね合わせていただけで……。
「あれ、その下着……」
「はい、たーくんが好きだって言ってくれた下着、買っちゃいました。替えも含めていくつか買ったので、これからたくさん穿いちゃいますね」
メリッサは年相応のあどけなさが残る笑顔で、嬉しそうにそう言ってくれた。
魅了スキルでいきなり世界最強 北山結莉/MF文庫J編集部 @mfbunkoj
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