第3話 丘の上で
期末テスト1週間前になりほとんどの部活がテスト休みに入っている中、帰宅部の俺はテスト勉強なんざ全く手をつけていなかった。
さすがにそろそろ赤点の危機を感じ始めたため放課後、駅前にある市立図書館で勉強をしようとした。学校からだと自転車で10分くらいだが、家までとなると30分弱はかかる。だが家で勉強するよりかは図書館で勉強したほうが遥かに集中出来るからな。
授業を終え、学校の駐輪場に向かう時、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた。同じクラスの相原だった。
「これから帰るの?」
「いや、これから図書館で勉強するんだ。」
「え!私も図書館に行く予定だったから一緒にいこ!」
「あ……ああ……。」
俺は戸惑いながらも答えた。
駅までは近くの比較的大きな川のプロムナード沿いの歩行者専用道を俺と相原は自転車を引きながら歩いていた。
先程から何も喋らないという気まずいムードが漂っていた。
「図書館まで行って勉強とはね……。関心するわ。」
相原が言った。
「中間テストでまずい点数を取ってしまったんだ。このままいくと……。」
「赤点?」
「そう。」
「からの補習で夏休みが潰れると……。」
「はっきり言わないでくれ……。」
相原はいたずらをしたときの子供の様に微笑んだ。
「夏休み何か予定でもあるの?」
「あると言えばあるな……。」
「どこか行くの?」
「まぁな。田舎の祖母の家に。」
夢中で話している時、相原があの話を持ちかけた。
「そういえば、まだあの夢見てるの?」
「あぁ。まだ夢にでてきてるよ。」
「不思議なものね、毎回同じ夢を見るなんて……。」
夢と国影村が何か関係があるかもしれないという事は言わなかった。言ったところで意味が無いからな。
また沈黙が続いた。
気がつけば駅前に着いており、駅前の路地を歩き、図書館に着いた。
そこからは閉館の時間まで相原と話すことは無かった。なにせ図書館を入った瞬間、外の騒音を忘れさせるような静けさが漂っており、とても話せる雰囲気では無かったからな。
帰り際、相原に「テスト頑張ってね。」と言って図書館を後にした。
ま……。少しは頑張るか……。と思い俺も図書館を後にした。
帰った後も勉強を続けた。こんなに真面目に勉強したのは受験期以来かな……。
補習の期間が国影村に行く期間と被ったら、まずいからな。
やはりこの夢を終わらせる為にも国影村に行く必要があると俺の直感が言っている。
いつも寝る間際に今回はあの夢を見るのか見ないのかと考えてしまっている。出来ればあの夢は見たくないから。あの夢を見た朝は謎の消失感と切なさが襲うからな……。
そう思っている内に眠りについた――。
またあの夢か……。
いや……。
今回は違う……。
丘から集落を見下ろしている。
ここはどこだ……?
山々に囲まれた集落、今にも山に隠れそうな夕日が眩しく輝いていた。空は茜色に染まっている。
丘にいたのは俺ただ一人だった。
だが何故だろう。俺は涙を流しながら夕日と集落を見下ろしていた。
俺はその時とてつもない悲しみに襲われていた。
なぜこうなっているのかがわからない……。
ただ、俺は悲しみに暮れていた。
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