第7話 写真

 電話を掛けてきた主に驚きを隠せなかった。



 何せ相原からの着信だからな。てっきり澤口が報告の電話を寄越してきたのかと思ったからな。



 俺はゆっくりとスマホを持ち、電話にでた。



 「もしもし?」

 「あ!もしもし!急にごめんね。今電話大丈夫?」

 「あー。全然大丈夫だ。」

 さっきまで寝てたくらい暇だからな。



 「明日、クラスの何人かで花火やろうと思ってるんだけど。来れる?」

 まさか相原から遊びの誘いがくるとは。これまた驚かずにはいられなかった。

 


 「いいけど……。」

 「何?」

 「あ、いや……。相原が誘って来るなんて珍しいなと思って。」

 「私から誘ったことなんてあったっけ?」

 「……。ない。」

 「あはは……変なの。」

 電話口で相原は笑いながら言った。

 「で?何時にどこ集合?」

 俺は呆れながら言った。

 「あぁ、3時に駅集合。そこから花火ができる湘南の海岸まで行くから。もちろん夜ご飯も来るよね?」

 「わかった。もちろん行くよ。」

 「よかった。花火は委員長が持って来てくれるらしいから。」

 相原は少し嬉しそうに言った。

 「ホームルーム委員の高山のことか?」

 「そう。ホームルーム委員の高山君。」

 


 高山とは少ししか話した事がなかったが、俺と高山には共通点があった。

 そう。中学時代バドミントン部に所属していたことだ。

 しかも高山とは中学が同じ地区で団体戦でよく戦ったため、入学式後の自己紹介で高山を見た時は既視感を覚えたが後々高山と話していたら、中学時代の事を思い出した。



 べ、別に忘れていたわけではないぞ。

 


 しかも相原と一緒でバドミントン部にはいらないかと勧められた。

 もちろん事情を説明し断ったので高山だけが入部をした。高山は同じ地区だったので俺の実力を知っていたから、俺が断った時は残念そうにしていた。

 だから、なにか気まずいのであまり俺から話しかけることは無い。

  

 

 「で、あの夢の事はどうなったの?」

 相原は興味津々に聞いてきたが、夏休みに入ってから何も進展がない……。



 いや、一つだけあったな。

  


 「一つだけあったな……。」

 「その一つって何?」

 さっきの興味津々な声とは違い、何か様子を伺うような声で言った。

 「今までの夢は結構不規則だったんだけど、最近同じ曜日に夢を見るようになったんだ……。」

 「それは何曜日?」

 「土曜日。」

 「それって……。」

 「ああ。今日だ。」

 「な、なんかすごい偶然だね。」

 相原は驚いていたのか、さっきまでとは打って変わって落ち着いた声になっていた。



 「でも、わかったのはこれだけだな。」

 「まぁこれでいつあの夢を見るのか悩まされなくていいんじゃない?」

 「そうだな。」

 相原のその言葉を聞いて一歩前進した気がした。

 


 「話変わるけど……。」

 と、相原は言った。

 「なんだ?」

 「ちゃんと計画的に宿題やってる?」

 「お、おいまだ一週間しかたってないぞ!?」

 その言葉に驚きを隠せず、大きな声で言ってしまった。

 「まだ一週間?もう一週間の間違えよ!」

 さっきとは変わって感情を高ぶらせて、相原も大きな声で言った。

 「そ、そう言うお前は終わったのか?」

 少し呆れ気味に言った。

 「当たり前じゃない。最初の3日間で終わらせたわ。」

 「み、3日!?」

 驚きのあまりイスから勢い良く立ってしまった。

 俺は冷静になり座り直した。

 「3日で終わるもんなのか?あの量。」

 「当たり前よ!私をなめないでよ!」

 電話越しから自身満々なのがよく伝わったきた。

 「べ、別になめては無いけど……。」

 「とりあえず早いうちに終わらせておいた方がいいんじゃない?そしたらあの夢の事に集中できるでしょ?」

 「それもそうだな。」

 「それじゃ電話切るね。明日ちゃんと来てよ?」

 「わかってるよ。じゃ。また明日。」

 「じゃあね。」

 そう言って相原は電話を切った。

 


 相原ってこんなキャラだったっけ?

 何か4月の時とイメージが全然違う……。



 と思い俺はイスから立ち上がり体を伸ばしながら「よし……。明日からやるか。」と独り言を言った。



 「そういえばこの前のアルバム全部見てなかったな。」

 俺は机の横にある本棚からアルバムを取った。

 俺が小学校に入学する前。国影村にいた頃の写真は3枚だけであった。

 3枚とも俺しか写っておらず、その背景は見覚えの無い山々、畑、川でありまさに田舎で撮った写真と言えるであろう。

 (実際そうなんだけど。)

 アルバムを何ページか開いているのアルバムに挟まっていた写真が一枚、裏向きに床に落ちた。



 その写真を拾い、表を見た時俺は驚いて目を大きく開いた。

 


 その写真には2人の男女の子どもが写っていた。

 


 背景は国影村であろう景色。

 全開の笑顔でピースしている少年は俺であった。

 そして写真に大人しそうに写っているもう一人の少女に見覚えがあった。



 顔は影でよく見えないが白いワンピースに白い帽子を被っていた。



 そう、あの夢で見る女の子そのものであった。



 「俺は……。夢に出てくる女の子に会った事がある……のか……?」



 驚きのあまり激しく心臓が鼓動し始めた。

 




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ひまわり畑に僕と君がいた 新城 零 @rei0872

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