日常編
第1話 あの夢
高校に入学してから早2か月。連日暑い日が続いており、そろそろ夏本番になろうとしていた。俺は高校まで自転車で通学しているが、通学途中の坂と照りつける日差しが俺を襲う。俺は毎日汗をかきながら学校へ向かうはめになっていた。
俺が通う県立高校は、地区の中では中の上といったところのレベルの高校である。
中学時代と何ら変わらず退屈な日々だった。
俺は自分の教室へと入って行った。
「よぉ、北崎。」
教室に入って真っ先に声をかけられたのは、高校生で知り合いになった澤口だった。
「おう。」
俺は適当に返事を返すなり、教室窓側1番後ろの席に座った。
澤口は俺の机の前に向かってこう言った。
「また、あの夢見たのか、お前?」
「まあな。なんでわかった。」
「なんとなくだよ。」
澤口はクラスで数少ない心を開いた人間だったから、度々見るあの夢ことについて話していた。
「しっかし、同じ夢を見るのは中々異常だと思うが。」
「俺もそう思う。この先何も無ければ良いんだけどなぁ……。」
「その話、私にも聞かせて?。」
そう言って俺たちの会話に入り込んで来たのは隣の席の
「くだらない話だぞ。」
「いいじゃない、聞いたくらい。夢がナントカって言ったけど。」
顔をにっこりとしてそう言った。
まぁ、聞かれてまずい話では無いし。そう思い、俺が今同じ夢を何回も見ている事を話した。
彼女はうーんと言って、「同じ夢を何回も見るのは不気味ね……。その畑と少女に心当たりは無いの?」
「全くと言っていいほど無いな。」
「まぁ、その内見なくなる夢かも知れないし、考えてるだけ無駄かもよ?それにもう時期期末テストだってくるし、そっち優先で考えた方が良いんじゃないかな?」
「そりゃごもっともだ。」
「ね?」と彼女が笑った時ちょうどチャイムが鳴った。
期末テストか……。先が思いやられる。
今日も特にこれといったことも無く、一日を終えた。
教室を出て階段を降りていると、後ろからドタドタと階段を降りる音がした。後ろを振り返ると相原がいた。
「北崎くんっ!」
「何か用?」
相原は息を上げながら言った。
「あの件考えてくれた?」
「あの件?」
「バド部に入るっていう話。考えてくれた?」
「いや……。4月にも言ったと思うが、入る気は無いぞ。多分これからもこの考えは変わらないと思う。」
「なんで……?」
「言ったろ、肩壊してもうまともに出来る体じゃないって……。」
「北崎くんそれでもレギュラー取れるって。だって中学生の時、県でベスト8だったじゃない。」
朝のHR前とは打って変わって真剣な表情だった。
「それは中2の時の話だ。中3の時はもう……。肩壊してまともにやって無かったし……。」
「それでも私は北崎くんなら出来ると思ってる。」
「なんでそう思うんだ……?」
「ただなんとなく。」
なんとなくかよ。
「とりあえず俺は入らないからな。」
俺と相原は黙ってお互いを見つめていた。
相原ははぁーと息を吐き「そっか。ごめんねこんな迫っちゃって。私部活だから。」
と、残念そうな顔をして階段をかけ上がって行った。
帰るか。
帰り道、俺は自転車を漕ぎながら中学生時代を思い返していた。
中学2年までは全力で部活に打ち込んでいた。高校も推薦で行くつもりだったし、県8に行ったときは人生で一番の喜びを感じた。
だが肩を壊し、大好きだったバドミントンを出来なかった時は相当ショックだった。
怪我が治ってからも部活にもほとんど行かなくなり、最後の夏は県に行くことが出来なかった。
特に悔しくは無かった。高校で部活をする気も無くなった。相原が声を掛けてくれたのは嬉しかったが、やはりその問いかけに応じる事は出来なかった。
そう回想しているうちに家に着いた。
自転車を玄関の右横のスペースに置き、家の鍵を開けた。
家の奥の方から「あらおかえり。」と言って母親が出てきた。俺は「うん。」と適当な返事をして家に上がろうとした時、母親がふと思い出した様な感じで言った。
「あっ、そうだ。あんた夏休み暇でしょ。」
「そうだけど?」
「なら行けるわね。」
「何が?」
「お盆休み、亡くなったお婆ちゃんの墓参りよ。あんた中学の時一回も行って無いんだから、今年くらい行きなさいよ。」
そう言って母親がリビングに戻る時「どこに行くんだ?墓参り。」
母親が立ち止まり、「
“
何か関係があるのか?
“
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