テレビ番組バトルロイヤルの最強コンビ

ちびまるフォイ

あらゆる番組に通じる恐ろしい第二の能力

テレビ番組の改変期ということで、バトルロワイアルが開催された。

まず全員に渡されたのは1週間の番組表。


「では、この番組の中から2つ選んで自分のものとしてください。

 同じ番組を取った場合は抽選となります」


「番組を選ぶとなにかあるのか?」


「その番組の能力を手に入れることができますよ。

 また、番組の視聴率は力に直結します」


全員一斉に高視聴率番組の取り合いになった。

あまりの争いの激しさに腰が引けた俺は

お堅い「ニュース番組」と、高視聴率そうな「探検ドキュメンタリー」を選んだ。


「この2つで得られる能力っていったい……」


ろくな説明もないままにバトルは始まった。

高視聴率番組「行列」を手にした人はいきなり全員に一斉掃射。


「ハハハハハ!!! オラオラオラ!!! 消えろザコども!!」


行列では毎回メンバーもMCも変わることから、

トリッキーな攻撃にくわえて、あらゆる場所への全方位攻撃を可能にする。


「うわぁぁ!」

「ぎゃああ!」

「助けて~~!」


普通のドラマを選んだ人たちは、

相手の心理や恋愛の感情を読み取る能力は得られても

圧倒的な力の前になすすべなく轟沈していく。


「うわわっ!!」


ニュース番組のもつ能力「速報」で

相手の能力にいち早く気づいてすぐに隠れて正解だった。


高視聴率の武器による一撃必殺を放ち続ける行列に、

他の人たちは力を合わせて倒すことで休戦と団結を行った。


「必殺!! 十字斬り!!」

「いでよ! ゴーレム!!」


「深夜アニメの低視聴率帯どもが、いきがってんじゃねえぇ!!!」


誰もが行列の勝利を信じて疑わなかったが、

深夜アニメ連合の前に行列は沈んでいった。


「バカな……こんなことが……」


「ふっ、実力は視聴率だけじゃないわ。録画率もあるのよ」


録画率の高い深夜枠は、高視聴率番組を選んだ人と比べて軽装。

しなやかな動きに翻弄されつつ、アニメ由来の能力に行列は負けてしまった。


俺はと言えば。

ニュース番組の速報能力で戦闘状況を把握して逃げていた。


「さ、さすがにこのままじゃダメだよな……」


いつまでもニュース番組能力で逃げ回っていても

最終的に追い詰められてやられてしまうだけだと気付いた。


もう1つの番組の力を使う時がきた。


「発動!!

『探検ドキュメンタリー! ジャングルの奥地にいるUMAを探せ!』」


激しい光とともに能力が発動した。

すぐにその結果は、俺自身のニュース番組の能力で悟った。


「なにも……起きなかったって……そんなのありかよ!?」


完全に番組選択を間違えてしまった。



探検:相手の能力に入り込む……ときがある。



こんな当たりはずれのでかい不安定な能力使えない。


それに探検ドキュメンタリーは昔でこそ大人気だったが、

今じゃネットですぐに答えが探せてしまう時代。誰も見ない低視聴率番組。

攻撃力も絶望的だ。


このまま特殊能力ラッシュの深夜アニメが勝ってしまうのか。


探検ドキュメンタリーを発動しても逃げ回る俺のもとに速報が届いた。

深夜アニメ連合がのきなみ駆逐されたという予想外の訃報。


「い、いったい誰が!?」


目線の先には明らかに他と違う服装をまとった人間がいた。

あれはどうみても……。



「特撮!?」



日曜日の朝にやっている特撮ヒーローのアーマーを身に着け

武器も特撮ヒーローの持つ殺傷能力高そうなフル武装。


盲点だった。

あんなのにどう勝てばいいのか。


他の番組参加者はこのラスボスを攻略するために力を合わせた。


「ミュージック・ステラブション!!」

「連続テレビ小説・あなたのために!!」

「世界の果てに飛ばしてQ!!」


高視聴率番組たちが能力を解放して襲い掛かるが、

ラスボスはその攻撃をひらりとかわしてカウンターをお見舞いする。


「なっ……!? あれチートすぎるだろ!?」


高視聴率番組のもつそれぞれの武器をもってしても、

相手にあたらなければどうしようもない。

とはいえ、そんな芸当ができる番組なんてあるのか。


「ククク、わが『笑天』に死角はない。

 どんな攻撃も見切って、虚をつくなどたやすい」


敵の持つ2つの番組は『特撮』と『笑天』

どちらも高視聴率による凶悪な攻撃力はもちろん


特撮の能力でさまざまな武器やロボを生成し

笑天の機転であらゆる攻撃を回避してしまう。


「この組み合わせ……勝てるわけないって!」


ニュースの能力で俺の敗北率まではじき出される。

他の番組能力を持つ参加者も全員倒されてしまった。


「おや? こんなところにまだ1匹ねずみが残っていたか?」


隠れ続けているのも限界が来た。

笑天の能力ホルダーにはどんな小さな隙も見逃さない。


落語家が持つ特有の「認知力」がそなわっているのだ。


「あ……ああ……」



「ここまでニュース番組の速報能力で逃げ回って来たみたいだが

 それもこれまでだ。悪いが番組の頂点は俺がもらう」


特撮ヒーローの持つゴツい銃口が鼻先に突きつけられた。

ああ、どうして俺はもっと有益な能力を選ばなかったのか。


「死ね」


引き金がゆっくりと引かれ――





『番組の途中ですが、ここで緊急ニュースです。

 先ほど探検ドキュメンタリーの番組内で、

 本当にUMAを捕まえたということで番組内容を変更してお届けします』




緊急速報:相手の能力を乗っ取り自由に動かせる。相手は死ぬ。


俺の第二の能力が発動した。

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