社会の裏面に光を当てた硬派小説。読み応え有ります。

SFとは、ソーシャル・フィクションの略でもある、と個人的には考えています。本作品はSFに分類しているけれど、内容的には硬派社会小説でしょう。
時代は近未来。空想的な未来じゃなくて、数十年後のイメージ。その時代で廃品回収業を営む会社が舞台で、主人公はその社員。社員以外にも重要なキャラ設定が成されています。
作者は現代の静脈産業で働いた経験を持つのでは?と勘繰る程に、作中で描かれる日々が其れっぽい。社会背景も新聞を丹念に読んでいるのだと窺わせるレベル。
前半は、人生の金言めいた台詞が続出して、奥深い。後半は、作品タイトルをアンチテーゼとする程のドス黒さ。読者は本作品の迫力に魅力されるだろう。
難癖を着ける積りは微塵も無いが、唯一のSFっぽいガジェットは無くても、物語が成立すると思う。だからと言って、冗長との印象は受けなかったけどね。