SFとは、ソーシャル・フィクションの略でもある、と個人的には考えています。本作品はSFに分類しているけれど、内容的には硬派社会小説でしょう。
時代は近未来。空想的な未来じゃなくて、数十年後のイメージ。その時代で廃品回収業を営む会社が舞台で、主人公はその社員。社員以外にも重要なキャラ設定が成されています。
作者は現代の静脈産業で働いた経験を持つのでは?と勘繰る程に、作中で描かれる日々が其れっぽい。社会背景も新聞を丹念に読んでいるのだと窺わせるレベル。
前半は、人生の金言めいた台詞が続出して、奥深い。後半は、作品タイトルをアンチテーゼとする程のドス黒さ。読者は本作品の迫力に魅力されるだろう。
難癖を着ける積りは微塵も無いが、唯一のSFっぽいガジェットは無くても、物語が成立すると思う。だからと言って、冗長との印象は受けなかったけどね。
超高齢社会となった社会、『未成年保護法』が施行された近未来の日本が舞台。
廃屋などの処理、『都市鉱山』からの資源回収など、雑用を受け持つ業者が台頭し、孤児となっていた主人公流(ながれ)はその社長の養子となり仕事を手伝うように。
仕事をしていくうち、ヒロインなぎさが、何者かに誘拐される事件が発生し……
作者自身のテーマを、キャラクターの口を借りてきっちり埋め込みながら、しかし話の筋がぶれず、分かりやすく読み進めていける。
表現それぞれにも統一性があり、
全体を通してかなり精巧に作りこまれた世界造形を感じる。
出色なのは悪役の意外性、またその側の正義であろう。
なるほど社会にゆがめられた、かれらの行動そのものは悪かもしれない。
しかしその原理にまで考えを詰めていくと、納得できるものがある。
ディストピアものとして、かなり高レベルの作品でした。
いいものを読ませていただきました。