綿密な計算が光る社会科学的ディストピアSFの力作。

超高齢社会となった社会、『未成年保護法』が施行された近未来の日本が舞台。

廃屋などの処理、『都市鉱山』からの資源回収など、雑用を受け持つ業者が台頭し、孤児となっていた主人公流(ながれ)はその社長の養子となり仕事を手伝うように。

仕事をしていくうち、ヒロインなぎさが、何者かに誘拐される事件が発生し……

作者自身のテーマを、キャラクターの口を借りてきっちり埋め込みながら、しかし話の筋がぶれず、分かりやすく読み進めていける。

表現それぞれにも統一性があり、
全体を通してかなり精巧に作りこまれた世界造形を感じる。

出色なのは悪役の意外性、またその側の正義であろう。
なるほど社会にゆがめられた、かれらの行動そのものは悪かもしれない。
しかしその原理にまで考えを詰めていくと、納得できるものがある。

ディストピアものとして、かなり高レベルの作品でした。
いいものを読ませていただきました。