知識×学習×小説の、おだやかな距離感

 スマートニュース×カクヨム小説コンテストのために書かれた本作。

 テーマは、リーディング&エンタメ。

 本作の内容は、白川千桜が毎回いろんな世界遺産を紹介するという内容……というわけでもない。

 題名だけみると想像つかないが、本作は世界遺産についての小うるさい解説本ではない。
 よくある、「この国にはこんな世界遺産があって、これは〇〇で〇〇だから、○○なのよ!」的な説明が毎回繰り返されるかと思いきや、それはない。逆にまったくない。

 内容はちょいと可愛いOLの、会社や私生活でのちょっとしたエピソードがつづられているだけであり、その会話の合間に世界遺産の名前が出る程度。
 そして章末に簡単な世界遺産の解説がつくだけ。

 まったくスルーしてもいいし、解説だけ読んで「ふぅーん」でもいい。語彙を検索して、画像を見て、「えー、こんな綺麗な場所があるんだ」と、ちょっとした旅行気分を味わっても構わない。

 本作は、まったく何も強制しない。

 ただ、ちょっとだけ、読み手の興味をそそり、知らない世界の扉を5mmくらい開いて、チラリと見せる。

 あなたは、暇つぶしに本作を読むだけかもしれない。もしかしたら、書いてある豆知識をどこかで披露することもあるかもしれない。
 まったく知らない遠い国文化に触れ、感動するかもしれない。
 そして、もしかしたら、あなたは、やがて地球の裏にある、その場所に、本当に行ってしまうことに、なるかもしれない。

 最高の教師とは、生徒に火をつけるものだという。
 本作は読者になにも強制しない反面、いやだからこそ、もしかしたら火をつけてしまうかもしれない、そんな可能性を孕んだ作品である。
 なぁんて、書くと、ちょっと大げさだけど(笑)。

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