30年前の事件は、怪異となって動き出す

ある日警察署に送られてきたSDカードに入っていた動画。
『大学生集団失踪事件の真相』と書かれたそれは、事件の重要参考人から送られてきたものだった。

そんなミステリーめいた導入は、シンプルなあらすじながらぐっと興味を惹きます。
冒頭を読んだ掴みもほぼ完璧。
動画が進むにつれて漂う不穏さや、次第に文字化けしていくタイトルにも好奇心を刺激され、次へ次へと読ませる魔力を持ち合わせています。
やがて現実へも怪奇現象が現れ、主人公達を襲う展開はじわじわと恐怖をかき立ててくれるでしょう。
これで解決するかと思われた先の展開には期待感すら持てました。

ただし個人的なことを言うなら、後半に入ると少し冗長かも。
舞台が百五十年ほど後である理由も、それならそれでもっと説得力のあるギミックや設定を積極的にちりばめてほしかった。「このあたりのせいかな?」と察する理由はありましたが、未来である必要性をあまり感じなかったのが残念。

ですが、これほどの小説を最後までしっかりと書き込んでいるだけですごい。
荒削りに感じる所は多々見られるものの、読み応えは充分です。