初めての除染作業員

作者 大木 奈夢

48

18人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

あの地震があった頃、僕は宮城にいました。当時は福島の状況はラジオなんかでしか聞けませんでしたし、
原発事故があった場所には行ったことがないので、あの頃の福島の姿はあまり分かりませんでした。
ですが、この作品はそんな福島の姿を言葉を通じて見ているようでした。
あの頃の福島の様子を知りたいと思った人にはうってつけの作品だと思います。

★★★ Excellent!!!

拝読する前は、未曾有の災害に見舞われたフクシマという地を中心に、そこで働く除染作業員の生活をドキュメンタリータッチで描いたような作品かと思っていた。
しかし読み進めてみると、そういう要素ももちろんあるのだが、むしろ一人の労働者の生活を切り口にして、彼の人生にフクシマがどのように関わっていったのか……というのがこの作品のエッセンスであることが解かる。

序盤は、フクシマで働く事になる前の、関西のコークス炉での出来事が数話に渡って描かれる。
自ら“炉上生活者”と揶揄しながら働く、苛酷な労働条件。そこで同僚から齎される、フクシマの除染作業員という働き口の話。環境面や給与面など、主人公には魅力的に映るのだが――
その後、次々と起こる想定外の事態に主人公は右往左往する事になる。フクシマの実情についてはもちろんだが、個人的には、この一人の労働者の自叙伝的な部分が非常に興味深かった。

さらに、フクシマの南相馬で主人公を待つ、被災地の姿とは……? 一体そこで何が行われているのか?
作業員の雇用に関する問題はよくニュースでも取り上げられていた記憶があるが、この作品を読んで、ああそういうことなのか、と改めて腑に落ちた部分も多くある。

一人の除染作業員の目を通して語られるフクシマの姿は、被災地全体の側面に過ぎないかもしれない。しかし、未だ完全復興には程遠い現地の状況、放射能以上に現地の人を苦しめる風評被害……。
紛れなくそれは、知られざる真実の側面であることも確かだ。

★★★ Excellent!!!

底辺日雇いの中年男性が除染作業を経験する・・・・・・・現実になさそうでありそうな話。

よくネットの広告で福島の除染作業が好待遇で載っているのだが、ここに書いてある内容は、現実で福島で本当に働いたかの如く、体験談の様な仕上がりとなっており、本当に福島で、しかも日雇いのアルバイトで働きたいか?と考えさせられる。

中高年の男性は特に、この作品に共感できる所があるであろう・・・・・・

★★★ Excellent!!!

あの時に起きた出来事が他人事であったことに安堵した人間はどれほど居るだろうか。かくいう僕もその一人である。しかしそれは、遠く離れた現実の末端であるからに過ぎない。そこには紛れもない過酷な事実があり、そこで行動している人々が居る。どこまでがフィクションであるかは、この物語を味わうためにはそこまで重要ではない。ただ、あの日から未だに続いていることの断片に触れて、何かハッとした気持ちになることが出来れば、それこそこの物語に意味があると言えるのではないだろうか。完結が楽しみ、というよりも、じっくりと見守っていきたい。