ずっと以前からフォローしていたんだが、連載中の作品は読まないようにしているので、結構な期間、待っていた。
でも、我慢できなくて、読み始めてしまった。遅筆を責める積りは無くて、待ち遠しかったと伝えたいだけです。
読み始めると、当然ながら、突然のお預けを喰らうのだが、それなりに福島の復興事業が分かって興味深かった。
「興味深い」とは不謹慎な言葉だけれど、私も作者と同年代。週末だけ現地にボランティア、と言うふうには体力と意気が追い付かない。
復興に関わっている方々には頭が下がります。勿論、住民の方や避難民の方の苦労にも頭が下がります。
個人的に最も希望を持ったのは、除染作業には畑の手入れも含めている、と知った時。
そうだよね。
手入れしないと耕作放棄地になってしまうから、国なり自治体の意気込みを感じてしまった。
ユックリで構わないので、その後も書き続けて下さい。数ヶ月後の作者の転機で、どう転がるかは不明ですが、それを(読書の)楽しみにフォローを外しません。
日当を目当てに除染作業員になった主人公による泥臭い日常。
文章が巧く、同僚として出てくる人々の時折見せる荒々しさが、主人公が身を置く肉体労働の現場に集ってきた人々の存在をリアルに感じさせてくれます。
哀愁ある中年男性が主人公の物語はカクヨムでは異質なのではないでしょうか。しかし、一話一話の長さも丁度よく、安定した表現力も相まって、ウェブ小説の中ではとても読みやすい良心的な作品だと思いました。
ポスト原発文学というにはあまりにも私的で、しかも虚実入り乱れている作品という事になっている。でも作中で描かれるような個人達の存在なしには、現実の全ての出来事は起こりえない。
除染作業員の日常について。
今後の更新も楽しみにしております。
拝読する前は、未曾有の災害に見舞われたフクシマという地を中心に、そこで働く除染作業員の生活をドキュメンタリータッチで描いたような作品かと思っていた。
しかし読み進めてみると、そういう要素ももちろんあるのだが、むしろ一人の労働者の生活を切り口にして、彼の人生にフクシマがどのように関わっていったのか……というのがこの作品のエッセンスであることが解かる。
序盤は、フクシマで働く事になる前の、関西のコークス炉での出来事が数話に渡って描かれる。
自ら“炉上生活者”と揶揄しながら働く、苛酷な労働条件。そこで同僚から齎される、フクシマの除染作業員という働き口の話。環境面や給与面など、主人公には魅力的に映るのだが――
その後、次々と起こる想定外の事態に主人公は右往左往する事になる。フクシマの実情についてはもちろんだが、個人的には、この一人の労働者の自叙伝的な部分が非常に興味深かった。
さらに、フクシマの南相馬で主人公を待つ、被災地の姿とは……? 一体そこで何が行われているのか?
作業員の雇用に関する問題はよくニュースでも取り上げられていた記憶があるが、この作品を読んで、ああそういうことなのか、と改めて腑に落ちた部分も多くある。
一人の除染作業員の目を通して語られるフクシマの姿は、被災地全体の側面に過ぎないかもしれない。しかし、未だ完全復興には程遠い現地の状況、放射能以上に現地の人を苦しめる風評被害……。
紛れなくそれは、知られざる真実の側面であることも確かだ。