凛として可憐な小春先生の熱弁が哲学の深淵を華麗に魅せる!

学校じゅうの憧れの的である小春先生が友人相手に毒舌を振るうところにある日偶然居合わせた晴人。
小春先生の専門でもある倫理の授業にとにかく苦手意識のあった晴人は、先生を脅迫するほど切羽詰まった様子で倫理の個人授業をお願いすることになります。
しかし、可憐な唇から紡ぎ出される刃物のような毒舌に彼の心は切り刻まれて……。

晴人君を貶めて翻弄する先生ですが、いざ大好きな哲学の話になると、瞳を輝かせながらソクラテスやプラトンの話を楽しそうに始めます。
先生の魔法にかかれば、当時の哲学者が生き生きとした姿でイメージされ、彼らがなぜそのような考え方を見出したのかがすんなりと頭に入ってくるから不思議です。
わかりやすく興味深い話に耳を傾けつつも、輝くような先生の色香に惑わされてしまうのは読者も晴人君も同じです。

やがて晴人君の心の中では小春先生の存在が特別なものになっていきます。
一方の小春先生も、晴人君の真っ直ぐさや、新鮮な感動と共に紡がれる言葉の奥深さに心を打たれるのですが、晴人君の高校生らしい恋愛事情が絡むなどして晴人君の中に様々な感情が渦巻いていきます。

無知の知、イデア論など、高校の倫理で聞いたことはあっても難しそうだしピンと来ない。
晴人君と同様にそんな印象しか持っていなかった私ですが、先生の可愛らしさや晴人君の恋の行方を楽しみながらちょっとだけ賢くなれました(笑)

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