良い意味でカオス。登場人物全員、普通じゃない

上野公園でパンダが死んだ日、主人公は「TSUTAYAの最後の娘」と出会う。貞子を思わせる蔦屋ツタ子、彼女の使命は「その夜、その映画をもっとも必要とする人にDVDを届けること」——。

この作品、とても魅力的な始まり方をします。文章も上手です。

その導入部、作品のキャッチコピー、紹介文などから自然と想像されるストーリー(映画の紹介を兼ねたハートウォーミングもの)があると思うんですが……この作品、一筋縄ではいきません。

展開が予想できない、というのとも違って、むしろ「次は当然、こういう台詞が出てくるだろう、こういうことが起こるだろう」と予想させるベタな流れがつくられています。その上で、予想とは全然違う台詞がポンと出てきたり、「え?」と思うようなことが起こったり。そのギャップが絶妙で、途中からは笑いっぱなしでした。

ハートウォーミングものかと思ったらホラーで、ホラーかと思ったらコメディで、コメディかと思ったらシュールで……そのどれでもないし、どれでもある、という感じです。

ともかく読んでみてください。魅力の虜になるか「何だこれは……」と困惑するか、どちらかだと思います。

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