エピローグ

「先生もっと頻繁に片付けなよー」

「ははは、いやぁこれでも結構片付けるようにはなったんだけどねぇ」

 これは本当だ。あゆみちゃんが僕の部屋に遊びに来るようになってから、人を上げられる程度には片付けている。ちょっと前まではこんな比ではなかったのだ。

 今日は土曜日。朝ぐーすかと寝ていたらインターホンに叩き起こされ、朝ご飯を食べてから、インターホンを押した張本人――あゆみちゃんと僕の部屋の掃除をしていた。ちなみに朝ご飯はあゆみちゃんがサンドイッチを持ってきてくれた。

「あゆみちゃんが来てくれると部屋が片付いていいわー」

「ほんっと先生ってだらしないんですもん。それにあたしが来ないと体に悪そうなものばっかり食べるし」

 確かに、あゆみちゃんが来てからは栄養バランスの取れたものを作ってくれるから最近はなんだか前より元気になった気がする。やっぱり食事って大事なんだなぁ。

「というか、まだ先生に彼女ができていないことにも驚きました」

「まあ、誰かさんによれば僕はモテるようには見えないらしいからね」

 僕が横目であゆみちゃんを見る。

 あ、目線逸らした。

「それよりあゆみちゃんに彼氏がいないってことにも驚きなんだけど。告白ぐらいされただろうに」

「それは……先生のこと中々忘れられなかったし……」

「ん?」

「なんでもないですー。先生はどんな彼女が欲しいんですか?」

「うーん、やっぱりしっかり者、かなぁ。一緒にいるとこっちも真面目になれるような。そんな女性っていいよね」

「そうですか……」

 それからしばらく僕らは黙々と片付けを続けた。

「先生」

 あゆみちゃんが唐突に僕を呼んで、作業の手を止める。

 僕も手を止めあゆみちゃんの方を見ると、意を決したような顔のあゆみちゃんと目が合う。

「あたし、しっかり者ですよ?」

 にっこりと笑うその顔が言いたいことはもちろん分かっていて、僕は一瞬怯みそうになったけど、一度大きく深呼吸をしてから返事をした。

「それじゃあ、しっかり者のあゆみちゃん――」



「僕の彼女になってくれませんか?」



 それを聞いたあゆみちゃんは満足そうな顔をして微笑んだ。


   〈了〉

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僕と君の十一か月(と少し) 四葉くらめ @kurame_yotsuba

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