転生先はスラムの孤児でした

　「事実は小説よりも奇なり」とは、よく言ったものだと思う。

　現実は英雄譚のように華々しく美しい物ではないし。
　吟遊詩人の語る冒険譚のように波乱に満ち溢れた胸踊るような物でもない。

　その事を知ったのは、一体幾つの時だっただろうか……。
　生まれた時から父はおらず、母はとっくの昔に死んだ。物心ついた頃から、路地裏で数少ない残飯を同じような孤児達と奪い合いながら暮らして来た。
　生憎と、俺には転生前の知識と中途半端な魔法技術があったから、生き延びるのに苦労はしなかった。

　そして今、俺の目の前には一つの死体が転がっている。

　これは、物語でいう所の分岐点なんだろうか。
　一先ず、今日を生きれるだけの食料を手に入れないと……。