Time

Ash

第1話 Prologue

子供の頃から時々見ていた夢がある。

始まりはいつも同じ、ドアを開けてどこかに入るところからだ。


その部屋は眩しいほど真っ白で無機質な、どこかの研究室のような部屋。

部屋の中を見回し、後ろ手にドアを閉める。


机や椅子のない、ガランとしたその部屋には窓すらない。

とてつもなく静かでドアの前に立ち尽くす。

『もし何か出てきたら、逃げるのはこのドアしかない…』そう思うとドアから離れられない。

全身が耳になったかのように音を探す、何も聞こえない。

『…誰もいないよな…』



『…?』

…いや、何か聞こえる。

自分が動くと、その小さな衣擦れの音で聞こえなくなってしまうほどの微かな音。

その音のほうへ眼だけを動かす。

さっきは気づかなかった部屋の右奥、角に小さな何かがある。

『何だ、あれ…』

恐る恐る、ゆっくりと近づいてみる。


『…砂…時計?』

そこにあったのは、赤い土台に豪華な装飾を施された綺麗な砂時計だった。

紅い宝石を小さな粒にしたような砂が、サラサラと華奢なオリフィスを通り

キラキラ落ちていく。


『この音だったのか。だけど、これ…』

その小さな砂時計の砂は落ち続けているのに、一向に落ち切る気配がない。

砂が減っていないように見える。

実際は減っているのだろう、だが本当に僅かな量だ。

落ちている砂と減っている砂の比率がおかしい。


『…どうなってるんだ、これ?』

まじまじと砂時計を見ていると

誰もいなかったはずの部屋の中、背後から男とも女ともつかぬ声がした。



「知りたいですか?」



急な背後からの声に驚いた時、人は瞬発的に振り返ると思っていたが

言い知れない恐怖感から先に固まってしまい、思った以上にゆっくりと振り返ろうとしていた。

そして視界の端、声の主が見えるか見えないか…



そこでいつも目が覚める。








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Time Ash @yukichan814jjj

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