第十八回 とらドラ!(竹宮ゆゆこ/電撃文庫)への応援コメント
自分はアニメから入った口なんですが、結局アニメのほうは最後まで観ることなく、なぜか原作は全巻&スピンオフまで読みました。
まず第一印象として、世の中にはこんなに文章のうまいひとが居たんだという純粋な驚きと、文庫本一冊をアニメ一話分に納めてしまうアニメスタッフのシリーズ構成の素晴らしさに感動しました。
そして強烈なアニメ人気が、結果として原作の終了を早めたのか、それとも終了ありきのシリーズ構成だったのかは定かではありませんが、ともかくラノベのアニメ化としてこれほどの成功例も当時としては画期的だったのではないでしょうか。
原作の話に戻りますと、日常の些細な描写からキャラクターや設定を浮かび上がらせるという方法は、間違いなくゆゆこ先生から学びましたし、挿絵やアニメのイメージに負けない読み応えのある文章というものを体感しました。
当時はまだ一読者で、自分が小説を書くということすら想像もしなかったんですけど、自分の文章の何割かは間違いなく、竹宮ゆゆこで出来ていますw
思い出のシーンといえば、クリスマスの巻ですかね。
大河のもとへきぐるみを着た竜児がやってくる。
どこか物悲しく、それでいてあったかい。
本作を象徴するかのような回でした。
そして一番面白いのは、やはり巻末のあとがきです。
おそらく、作品とまったく無関係な面白いあとがきを書かせたら、日本でもトップクラスなんじゃないでしょうかww
しかし残念なことにのちのゴールデンタイムや同作者さまの他作品にはあまり魅力を感じなかったんですよね。
これもまた小説の面白いところです。
長くなりましたのでこの辺で。
ではでは。
作者からの返信
竹宮さんで特筆されるのは、ギャグパートとシリアスパートの文章の使い分けが振り切っていて、同じ文庫本を読んでいるのに別の作家の作品を読んでいるような気持ちにさせられるところでしょうか。ギャグとシリアスを1冊の中で両立できる作家というのはそうはいないし、この二つの距離の離れ具合で言うと竹宮さんあたりがトップクラスであるような気がします。
今でこそ日常系がもてはやされていますが、結局のところそういった作品は物語の安定感を求めてそういう構成をとっている場合が多いというのが事実で、これは漫画やアニメなど絵があるメディアではいい方向に作用することももちろん多いんですが、一方でストーリー展開を求められる小説では不向きな場合が多いです。とらドラというか竹宮さんはそうした誰にでも起こりうる日常の中でストーリーを展開させるのが非常にうまいというのは、私も同意するところであります。
アニメ化で大成功した当時の作品で言うと京アニにおけるフルメタふもっふ、ハルヒ、それに狼と香辛料が先を行っていたので画期的というほどではないですが、挙げたものは演出面や画面の華やかさに注目が行ったのに対し、とらドラは特に声優の演技に注目が集まった作品でしたね。キタエリは確かこれで「釘宮堀江甲斐田と渡り合えるとかすっげー新人が出てきたな」とか思った気がします。
思い出のシーン、そうですねえ。。。私は性悪な人間なので、8巻のあーみんVSみのりんのただただ醜い本音ぶつけ合い罵り合い罵倒しあいのシーンがとても印象に残っています。内容については、触れないことにしますw
ゴールデンタイムは爆発力がなかったですよねえ。「あの」竹宮ゆゆこが大学生を描くってなもんだから、もっと爆発力があると思ってたんですが、終始ドロドロしたままになってしまいました。ギャップがいいんですけどねえ。
第十一回 神様のメモ帳(杉井光/電撃文庫)への応援コメント
なんだか、池袋ウエストゲートパークみたいな作風ですね。
あれも、お人よしの元ヤンにーさんのマコトが人脈を駆使して事件を解決してその体験談をどっかの雑誌のコラムに乗っける的な話でしたし。
ホント、ライトノベルとエンタメの境界って良く分かんないですよねww
西尾維新の戯言シリーズとか意見が分かれましたし、京極夏彦の百鬼夜行シリーズもラノベと定義するひともいるわけですもんね。
作者からの返信
ウエストゲートパークはドラマしか知りませんが、それよりももっと狡猾で暗い作風というのが印象でしょうか。青春物語では断じて無いですしね。
ラノベの定義なんて十数年前にこの業界にたどり着いたときからやってる議論なので、それこそ議論するだけ不毛だと思っています。各人で違っていいと思いますよ、こういうことは。
わたし意外に「ニーナと・・・」を読んだ人っていたんだ!
びっくり・・・って、あまりにも酷いかな(笑)
でも、これを読んだ感想って、初めて目にしました。
実のところ、わたしもミリオタ。だけど、ラノベでは異世界でも、ハーレムでも、何でもOKなのですが、こと軍事に関する事となるとリアリティーを求めてしまう。
日本が太平洋戦争で勝つIF小説を書こうと考え、悩みに悩んだ結果が「日清、日露戦争以前から、やり直さねば勝てん!」と結論に至った奴ですので・・・。
作者からの返信
ハルヒの感想でもお話しましたが、面白そうだと思ったら次から次へとむさぼるように読みます。戦車のラノベなんて見たこと無かったですから、飛びついたわけですね。
まあこの世界に足を突っ込んだならお分かりでしょうが、二次大戦IF戦記なんて世にありふれてるんですよね。そこをどうフィクションで差別化するかが腕の見せ所です。そういう意味では、本作は「ミリタリー」を真正面から扱いながらも、実にうまく他との差別化を行っていますね。
第四回 狼と香辛料(支倉凍砂/電撃文庫)への応援コメント
好きで五、六回は読んだ作品です。
脇に出でくるキャラも、うまいと唸らされ、そのキャラを扱った短編集も大好きでした。
羊飼いのノーラ、女商人のエーブなどなど珠玉の作品。
その後の『マグダラで眠れ』では「また獣耳少女かよ!」と思ったけど、読んだら面白かったです・・・御見それしました(笑)
『狼と羊皮紙』は買ってはあるのだけれど、コルがロレンスの代わりになるのかなぁ・・・と、半信半疑で眠らせてあります。
作者からの返信
狼と香辛料でいうと、エーブの存在が光っていましたねえ。陰のある敵か味方かわからない存在というのは、いろんな作品で私が好きになるキャラクター像ですが、彼(あえてこう呼称しておきますw)に終盤の物語全体が振り回されて物語が進んでいくさまに夢中で読んだものです。
マグダラは後で紹介しようと思っているのでネタを出し惜しみますが、錬金術を「リアル」に扱ったエンタメ作品というだけで大笑いした記憶があります。
羊皮紙は、ロレンスとコルの職業の違いによる立場の違いを意識しながら読むとなかなか面白いと思うので、読み比べるのが正解と思います。
編集済
第三回 冴えない彼女の育て方(丸戸史明/ファンタジア文庫)への応援コメント
ごめんなさい、これ読んでません。あまりにも売れてるもんで・・・。売れ筋作品って、どうも好きではなくて。
だったら、コメント書くなって!
それも重ね重ね、すいません。
作者からの返信
この本は技術として本当に巧みで狡猾なので、上を目指すなら読まなければいけない本です。是非読むべきです。
第二回 世界平和は一家団欒のあとに(橋本和也/電撃文庫)への応援コメント
ちょい前の電撃さんって、ちょっと間があいて出てくる作品って、必ず最終巻でしたよね(笑)
わたしは高野和さんの『七姫物語』って好きだったのですが、二年ぶりに続巻だと思ったら、いきなり終わりでガッカリしました。
あれって、作者さんが詰まってラインから外れると、それまでだったのですかね。
作者からの返信
電撃だけでは無い気がしますが、中堅の作品には「適当な終わらせどころ」を常に探しているような雰囲気には私も心当たりがあります。終盤に向かって伏線拾いをかなり急いでいるとか、5巻刻みの巻数で終わることがやたら多かったりとか。
第一回 涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流/角川スニーカー文庫)への応援コメント
売れ筋の作品が好きではないので、初めは読みもせずに毛嫌いしていたのですが、あまりにも売れるので「どれどれ、粗でも探すか!」と手に取ってみると、素直に面白かった作品です。
あのときは、なんだか谷川流さんに負けた気がした・・・。
今では、「たんなるweb作家が、誰に喧嘩うってんじゃ!」と言われそうだけど、これ出したときの谷川さんだって、新人のペーペーだったのだもん(笑)
最近は小説の技術的な説明をするときは、この作品を使わせて貰ってます。アニメも含めれば、誰でも知っていそうですからね。
作者からの返信
新人ではありましたが、当時ぜんぜん出なかったスニーカーの大賞というインパクトにはたまげたし、実力も伊達ではなかったですねえ、谷川さんは。私は「売れているもの」というよりは「面白そうなもの」をどんどん読んでいるので、ハルヒはすぐに手を取った記憶があります。
長門有希の百冊にもあるとおり、谷川さんの功績は当時は全くの別分野だったSFとラノベの境界線を縮めたことにありましょう。VRMMOがラノベでブームになりましたが、.hackとハルヒが無かったらラノベでは出てこなかったでしょうなあ。
第七回 ミスマルカ興国物語(林トモアキ/角川スニーカー文庫)への応援コメント
ミスマルカめっちゃ好きなんです!
主人公マヒロが、ハッタリと度胸で苦境を乗り越えて行くのがスキ!
かと思えば、ここでゼンラーマンかよ!ってのがスキ!w
圧巻だったのは、第一部のラスト。
まるでオセロのように、マヒロの周りの駒が全部ひっくり返ったのに鳥肌が立ちました。
もうスキ過ぎて、ミスマルカの世界観をマネした舞台設定作って、短編一本、長編一本描いたぐらいです。
あの設定でまたなんか描こうかなぁ
作者からの返信
ミスマルカほどどんでん返しという言葉の似合う作品は無いかもしれません。ためてためて、ここぞというところで物語をひっくり返す。やろうとしてもあれはなかなかできないです。私だったら、設定を出し惜しみ出来ないタチなので早々に大事なカードを切ってしまいますねえw
第一部はマヒロの周囲の駒がひっくり返ったのもそうですが、その劣勢にも関わらずマヒロが自分をかなぐり捨ててでも国の民に危害が及ばぬよう上々仕上げてみせたところが、バトルをメインとした物語では決して味わえない感動を覚えましたっけ。
第四回 狼と香辛料(支倉凍砂/電撃文庫)への応援コメント
『狼と香辛料』は大好きな作品です。
主人公ロレンスの頭の回転の良さと、それを上回るホロの聡明さが好きだったりします。
読んでる方の予想をことごとく上回ってくれるのが心地良かったですね。
近頃刊行された続編も買ったのですが、まだ読んでいません。
読みたくもあり、読みたくもなしってとこです。
作者からの返信
経済という概念にあまり親しみが無いからか、読んでるほうの予想というか、自分の場合は学が無いので、そもそもどのようにして問題を解決すればいいか予想がついていませんw そういう意味で、バトルではなく頭で問題を解決していくという方向性を、ミステリだけでなくファンタジックな世界観のラノベに融合させたという点でも新しかったですね。
続刊はロレンスとホロの娘に思うように振り回されるコルが見所です(あれ?
第一回 涼宮ハルヒの憂鬱(谷川流/角川スニーカー文庫)への応援コメント
あまりラノベの再読はしないのですが『涼宮ハルヒ』シリーズは『憂鬱』『笹の葉ラプソディ』『消失』が読みたくて何回か読み直しました。
やっぱり名作ですね。
作者からの返信
ライトノベルといえばファンタジーだった時期に根っこからひっくり返した作品で、当時は驚いたものでした。エピソードごとに出来不出来の差が結構ある作品ですが、その三作は出色の出来ですね。私はエンドレスエイト、結構好きだったりします。アニメ版は御免こうむりますがw
第七回 ミスマルカ興国物語(林トモアキ/角川スニーカー文庫)への応援コメント
ミスマルカは一巻の完成度の高さが異常だっただけに、二巻、三巻と続けて読むにつれて物足りなさを感じてしまった一作です。ゼンラーマンの登場あたりで、もう一度盛り上がってはきたんですが、結局、最後まで読むには至りませんでした。
コレを機会に再読しようかな?
林トモアキ作品といえば、自分にとっては戦闘城塞マスラヲをおいて他にはありません。当時の自分の境遇と、主人公ヒデオの境遇を重ねていたこともあり、もしかすると自分が小説を書くようになった直接的なきっかけのひとつかもしれません。
マスラヲのあとに、お・り・が・みの一巻を読み、人間というのは頑張れば上達ってするんだなと思いました(ぁ
ともあれ林トモアキ先生は、ご自分でも仰っていますが、畳む気のない風呂敷の広げ方にこそ本領があるような気がします。
作者からの返信
へろりんさんの返信でも書きましたが、どんでん返しがミスマルカの本領なので、第一部ラストの7巻あたりまでは読んでほしいかなあと思います。ただまあ、昔のノベルゲーみたいに鍵になる仕掛けが現れるまでは物語が退屈というところも否定できない面があると思いますので、ある意味では「物足りない」という指摘は的を得ている気もします。
マスラヲもおりがみも未読なんですよね。積んではあるんですが(駄目。
近年では「きちんと設定を作らない」という林さんのような手法で作られる作品は少なくなりましたよね。これはまあ商業的にも仕方のないことなんですが、そういう意味でも、独自の境地を持った作家さんかなと思います。