切なく、甘く。戦国時代の姫君とヴァンパイアの壮大なラブファンタジー!

物語は、織田信長の妹・お市の方がある日城の石垣から足を滑らせ、平成の世へタイムスリップしてしまうところから始まります。彼女が目覚めた場所は北海道、とある美しい洋館の中。彼女を救ったのは——美しい二人のヴァンパイアの青年、ジョエルとセバスティでした。
何が起こったのかすら理解できず、初めて見るものばかりの暮らしの中で、少しずつ現代の様々な物事に触れていく市。それと同時に、時に優しく、時にどこか意地の悪いジョエルに彼女の心は揺れ動きます。元の戦国の世で既に浅井長政へ嫁ぐことが決まっていた彼女は、自分の中に生まれたその想いに戸惑いつつも、抗うことができません。そしてジョエルも、美しく愛らしい彼女に強く惹きつけられていきます。

こうして始まってしまった、戦国の世の姫君とヴァンパイアの恋。この先に待ち受けるいくつもの大きな障害を、二人は乗り越えることができるのか——。

お市の方の日々は、タイムスリップというファンタジー要素と史実に基づいた描写がとてもバランスよく、不自然さを感じさせることなく一つに織り込まれています。ヴァンパイアという架空の存在を恋の相手としながらも、ジョエルの人物像を丁寧に描き出すことによって、いかにも架空の物というような違和感を一切感じさせずに読み手をぐいぐい物語へと引き込んでいきます。
本来ならば恋に落ちることなど許されないはずの二人が、時代を超え、いくつもの障害を越えながら必死に手を繋ぎ合おうとするその姿を、読み手は時に切なく、時にハラハラしながら見守らずにいられません。

物語は、まだ途中です。大きな困難を越えた後に、また新たなドキドキが待っていそうな気配が……。
最後まで目が離せない、姫君とヴァンパイアの深い恋情と愛情を描き出す物語です。

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