第4話 ブス脱毛を決意。~脱毛編②~

担当の普通のお姉さん(いくら内心とはいえ普通普通連呼しすぎていいかげん失礼すぎる気がしてきた)は、私が待っている間に書いていたアンケートに丁寧に目を通し、脱毛しようと思った理由を書類の上では無難に「自己処理が面倒になったため」としていたのを目に留めて、「そうですよね、自分でするの大変ですよね」と微笑んだ。


で、動機については以上。

それ以上突っ込んで聞かれることはなかった。


そう、私は脱毛についていくつか大いなる勘違いをしていたのだが、そのうちのひとつがこれだ。


脱毛サロンに行って最初に受ける「カウンセリング」というものは、「私こういう訳でどうしても脱毛したいんです!」という決意とか「私のムダ毛こんな濃いんです困ってるんです!」という悩みとかを聞いてくれるものではなく(いやこちらが言えばもちろん聞いてくれるんだろうけど)、「施術のやり方とお金の払い方」を詳しく説明してくれるものなのだ。


……いかんいかん、危うく言わなくてもいい恥ずかしい脱毛理由を軽妙なトークで披露してしまうとこだった。ふい~~。


私の安堵も知らずに、お姉さんは脱毛の種類とやり方、施術にあたっての注意、コースの内容などを丁寧に説明していった。


エステサロンで行われている光脱毛は、痛みが少なく安価という利点がある。皮膚の中の埋没毛に特殊な光を当てることで、毛根を異物として身体に認識させ、排出させる。毛の生えるサイクルに合わせて埋没毛に光を当てる施術を定期的に行うことで、毛が無くなっていくというしくみだ。


で、お姉さんはここで、私にとってはさらに衝撃の事実を口にした。


「皮膚に毛が埋没していないと施術ができないので、前日の夜までに剃り残しのないようにシェービングをしてきていただきます」


(ええっ!!!脱毛って処理したら生えてるやつが抜けるわけじゃないのぉ!これで面倒くさいシェービングとおさらばだと思ってたのに!!)


ちなみに手の届かない背中と、VIO(とは何か皆さんご存じかもしれませんが、こないだ電車の中でおっきい声で「VIOって何~?」って友達に聞いてたJCがいたので一応説明。下半身の前と、性器&肛門のまわりのことだよ☆)のOの部分はサロンで剃ってくれるとのこと。VIはこちらで剃らないといけないのだが、お姉さんはやり方をマイルドな表現で丁寧に説明してくれた。特に私がなるほどと思ったのが、Vの部分をどう整えるかということ。残したい部分は毛を生やしたままにしてそこを避けて施術できるのだが、これ、最初は全部剃っちゃって、何回か施術を受けて毛が減ってきてから様子を見ながら毛を残す部分を決めて整えた方が綺麗にできるそうで。そんなツルッツルにして大丈夫なのかとご心配の方もおられようが、現代の医学ではアソコの毛というのは特に何かの役割を果たしているわけではなく全然なくても何の弊害もないとの研究報告があるとのこと。ワタクシ、安心してツルッツルに剃ることにしました。



光で色素を狙うので、ほくろやシミ・ソバカスや古い傷痕など色素の濃い部分は避けて施術する。日焼けしていたり、皮膚が乾燥しているのもNG。お姉さんに「しっかり保湿しておいてくださいね~」と言われた。施術前に自分でしなければならない準備が結構めんどうくさいなぁ……と早くもメゲそうになったが、いやいや!私は絶対全身ツルッツルになると決めたのだ!!ツルッツルでアラフォーを謳歌するのだ!!!シェービングと保湿くらい、そのあと何十年も延々ムダ毛を剃り続ける手間に比べたら全然へっちゃらだ!頑張るぞー!!


と、鼻息荒く決意したところで、いよいよお金の話になった。




ここで、脱毛の料金に関していちばん大事なことを皆様にお伝えしよう。


よくネットとか中吊り広告で出てる、数千円代の安いプラン。絶っっ対あの通りにいかない。特に、ある程度見栄はっちゃうアラサー以上の人は。


もちろん最安値のプランも選択できる。

できるけどそれは、本当に最低限のプランで、他のプランについているいろいろなサービスやオマケがまるっきりついていないのだ。


あと、月額何千円という金額、あれは結局、ローンの分割回数を意味する。もちろん今時スマホだって分割で購入するのが一般的なわけで、無理なく払える範囲で契約すれば問題はないだろう。でも、前もってローンだという心構えで契約するのと、説明を受けて知らされるのでは、気持ちの持ち方やお金のやりくりも微妙に違ってくる。


私は事前に脱毛の相場を調べた時「そうよね、ローンよねこれは…」と薄々分かってはいた。いたけれど……。



「施術料が四十ウン万ウン千円に、利子が八万ウン千円で、しめて五十ウン万ウン千ウン百円になりまぁす」ゆわれた時には……。


だいぶ怯んだ。


引き返すなら今だと思った。

今だと思ったけど……。


不安な気持ちに一切フタをした。

大丈夫だ。毎月これまで通りせっせと働いて、いらん服とか小物とか無駄遣いしなければ、全然毎月払える額だ。私ももうなんたってサーティーセブンイヤーズオールド。いい大人がこれくらいのローンひとつ組むのにビビってどうする。この歳なら車だの家だの買ってる人だってざらにいるのに自分のチキン野郎め!



さぁ、ファイナルアンサーのお時間だ。


私は準備してきたFURLAのポーチ(しつこいようだが雑誌のふろく)から、印鑑を取り出した。


指先ふるふるさせて2回くらい印鑑をテーブルの下に落として、お姉さんに「大丈夫ですか!?」と言われて恥ずかしい思いをしながら、なんとか契約を終わらせた。



カウンセリングの開始から契約が終わるまで2時間かかった。口のなかガビガビに乾いてローズヒップティーを3回おかわりした(と書くと私がスゴい図々しい人みたいだが、無くなるとお姉さんがわんこそばの如く持ってきてくれるのだ)。だいぶ疲れた。


が、疲れてる場合じゃない。ローン会社との手続きが無事終了したら、いよいよ施術に入る。…それまでに全身をシェービングして保湿クリームを塗りたくっておかなければ。ちょっと前に突然リア充に流行ってたニべアの青缶のデカいやつ買ってこよう。




(※追記:ちょわ子、知識がないもので&ギャグになりそうだと思ってニベアにしてしまいましたが、脱毛する場合の保湿は油分の入っているものはダメだそうです。コメント欄で教えていただきました。…次から気を付けよう。サロンから施術後に特典のローションを貰ったので、今後はそれだけ塗ろうと思います)

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