でたらめに用意された食材を、一つのコース料理にしてしまう驚異的手腕。

『白翼のポラリス』で第6回講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞した阿部藍樹先生。
本業は国語教員でもあるその実力は、まさに圧巻。

twitterで募集した三〇のお題――「ビー玉」のような使いやすいものから「5000兆円ほしい!」のような時事ネタ、「うんこから出てきた大学生が踊りだし目から殺人光線」のような意味不明なものまで――を全て、宇宙を舞台にしたSF物語内で整合性を保てるよう用いようとする試みにただただ驚かされるばかりだわ。

例えば「第4次厚揚げ大戦」だったら、あんたたちはどう使う?
あたしもだけど、精々思い浮かぶ用途は、食事中に登場人物たちが厚揚げを巡って争うギャグシーンぐらいじゃないかしら。

ところが阿部藍樹先生はプロだけあって、想像の翼をはためかせて、常人が到達不可能な地点にあっけなく着地してみせるの。
何と、地球に飛来した大型生命体を「厚揚げ野郎」と形容して、それらとの月軌道宙域での激突を「第4次厚揚げ大戦」と名付けたのよ!

全てのお題を、オムニバス形式ではなく一つの作品内で使ってるだけでも尋常じゃない力量なのに、一般人が思いもよらない使い方までしてるんだから、まだ使われてないお題が今後どんな使い方をされるのか楽しみだわ!

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