54 この地の底では、今も

 ざく。


 ざく、ざく、ざく。


 手にしたシャベルで庭の隅に穴を掘る。

 アトランティスが引き起こした世界規模の大災害から、ちょうど二年。


 ようやく建て直した新しい我が家の庭に「タイムカプセルを埋めたい」と言った僕に、父さんは優しくうなずいてくれた。


「これくらいで、いいかな」


 だいぶ着慣れてきた制服の詰襟を緩めて息をつく。

 声変わりが終わって喉の調子が良くなったからか、最近は独り言がちょっと増えたと思う。


 制服のポケットに手を突っ込む。

 硬い感触。

 取り出したそれを――ルビーのような螺旋円錐が向かい合った、手のひらサイズのペンダントトップを、金属の箱におさめてしっかりとボルトを締めた。


「本当に良いの、旭?」


 不意に声をかけられて振り向くと、地元M高校の制服を着た“姉”が立っていた。


「ノクス、帰ってたんだ」

「うん。今日は早めに帰ったら、って綿貫つらぬき先生が」


 ご両親も捻利部界転おじいさんも居なくなったノクスは、2年前からうちで暮らすようになった。

 突然できた姉――それもとびきり美少女の――に、はじめはどぎまぎしていたけれど、今ではすっかり家族として接している。


「その“DRL”――もうって言っても、思い出はつまってるんじゃないの?」


 ノクスは上目遣いで心配そうに僕を見る。

 出会った頃は僕の方が見上げていたのに、いつの間にかあべこべだ。


「思い出は、にあるからね」


 わざとらしく胸を親指でトン、とやってみせる。

 口にした言葉はウソじゃない。

 それはノクスも分かってくれて、長い睫毛をそっと閉じて「うん」とうなずいてくれた。


 僕は今でも、あの時と変わらない熱いものを。

 との絆を胸の内に感じているんだ。


 理由なんて、決まってる。



 

 僕はいつだって、こう言えるんだから。





 ――――“!”






『屹立覇界! ダイラセン』


 完

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屹立覇界!ダイラセン 拾捨 ふぐり金玉太郎 @jusha

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