【オススメ】魔晶の病理【紹介】

 キャラクター性のファッション化が進む昨今のウェブ小説。外身だけで中身の無い登場人物が動き回る作品が増えている現状は、コンテンツを衰退させる病魔がネットの海を侵食しているかのように感じる一方で、「これを出しておけばとりあえずは大丈夫」という安寧でもあります。

 そんな電子の大海で、自我を失わず潮流に逆らって突き進むかのような強い意志を感じる作品と出会うことができました。



病を治す、学者になった。君との約束を、果たすために。


〈タイトル〉魔晶の病理

〈作者〉碩 輔 - Seki Tasukuさま

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883880130


 

 舞台は明治時代日本を思わせるレトロな世界。

 物語の鍵は「鉱魔晶」と呼ばれる不思議な石と「病」。

 「魔法」×「医療」という構成を確かにする設定の作り込みがとんでもない深度で行われており、読ませていただいた時に背筋が寒くなったのを覚えています……。

 そんな重厚な設定もさることながら、それを物語の中で成立させる作者さまの腕も確かなものです。

 綴られる綺麗な文章は何度も練って見直してを繰り返し、洗練させてきたことがうかがえます。一長一短でこの文章は書けません。まさに研鑽の賜物。特に心情描写が細かく、登場人物のひととなりがひしひしと伝わってきて、一人一人が生きていることを感じさせてくれます。

 また、地の文においても会話文においてもそうなのですが、不用意な肉付けがなく、とりあえずこんな動作をさせておけといった文字稼ぎもなく、極めて真摯に展開と文章を作り上げている作者様の姿勢に感動すら覚えました。

 人物の外見描写を極力押さえるような書き方は読者へ想像の余地を預ける配慮とお見受けしました。

 キャラクター打法のいわゆる昨今のライトノベルへのアンチテーゼ的な片鱗が見え隠れし、ウェブ小説として大海を漂うには惜しい作品と思う一方、掛け値無しでこのような良作に出会えて嬉しいです……!


 総じて真摯に真面目に創り上げられる物語は圧巻の一言。

 興味の湧いた方は是非一度読んでみてください!



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電子の海に溺れる文字を私は掬い上げたい みりあ @Emilio

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