around 30-10's side
@kt32
プロローグ ※恋メト6巻のネタバレが含まれます。
七月某日。
第二回純情ヘクトパスカルアニメ制作打ち合わせ後。
『それじゃ、結論を教えて頂戴』
騒がしい編集部の細長い廊下に、コツコツとメトロノームのような一定のリズムを刻むヒールの音色が響き渡る。
『これからも最後の最後まで迷い続けることを』
横髪の毛先が若干ウェーブがかかり、生真面目さを如実に表したアンダーリムの眼鏡を掛けた女性。
そのフレームの型にはまるレンズの奥にある瞳は、その性格と紛うことなく、遠くを見つめながらも決してブレやしない。
『アニメのストーリーはここにいる三人と、そしてあなたで考える……』
アニメ事業部に戻る道中、多少くせ毛のあるけれど後ろで一つにまとめた彼女の髪とは違い、先ほどの打ち合わせは、結局のところ何も進展しないようでいて、それでも、彼女に福音をもたらした……らしかった。
『原作のストーリーはここにいる三人と町田さんで考える……』
そんな彼女は、呆れと苛立ちと、そして、感傷に浸りながら、打ち合わせ資料を大事そうに胸に抱え直す。
『……私と苑子を競わせようっていうの?』
彼女の名は、
不死川書店アニメ事業部プロデューサーであり、今回、彼女が手掛けるアニメ作品は"純情ヘクトパスカル"。
その原作者である霞詩子が誰かとそっくりであることを思い知らされる。
『自信ない?』
そして、竹下千歳は、あの紅坂朱音の大学時代の漫研同期であり、
かつて彼女もまた――
『rouge en rouge』創設時の『仲間』だった。
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