第1話 庭の中で………

その日、アリス・リドリール 15歳は屋敷の庭を散歩していた。

散歩といってもアリスには足がない。

まぁ、それでも散歩は散歩だ。


(外の世界はどうなっているのかしら?)


アリスはそんなことに想いを馳せていた。別に屋敷に監禁されているわけではない。アリス自身、あまり外に出たいと思わないのだ。

というより、アリスのいる国がアリスをそうさせていた。

アリスの住む国は美しい緑が溢れ趣のある美しい国ではあるが、なんといっても差別が酷かった。

美しい国であるにもかかわらず、そこに住む国民たちはどうにも醜いものであったのだ。

それ故、アリスの足のない体で街に行けば、周囲から侮蔑の目で見られ、大人はもともと愛想が悪いのをより一層悪くし、子供はその純真無垢さからあからさまに行動に示してくるだろう。


だろうというより、一度どうしても行きたいと父 サミュエルに頼み込み連れて行ってもらったことがあるのだ。

サミュエルは嫌がったがアリスはいつもの過保護だと思っていた。

けれど美しい街並みに見とれたのも束の間。次第に街の人々の悪い雰囲気を感じ取りすぐに屋敷に戻ってしまったのだった。

それ以来、アリスはその街が嫌いになった。だからわざわざ街に出る必要もないし、出たいと思うこともなかった。

では、何故外の世界に想いを馳せていたかって?アリスが思いを馳せていたのはそんなちっぽけな街でなく、これから先、一生行くことのないだろう東の国や地球の反対側の国についてだった。想像力豊かなアリスはそうしていることが何よりも楽しかった。


歩みを進めているうちにアリスは目的地に着いた。散歩といっても最後には決まった場所があったからアリスは遠回りして散歩しつつそこを目指していた。

車椅子は一人で歩くには少々疲れる代物であったが松葉杖よりはマシだった。この深緑生い茂った庭を歩くのに松葉杖はかなり歩きづらかった。

一歩進むたびにスカートの裾が少しづつ汚れてしまうし、杖に蔦が絡んでしまったりするのだ。

それに何より、本や侍女たちと一緒に作った焼き菓子を持ってくることが出来なかった。

そもそも松葉杖を使って庭で盛大にアリスが転んで以来、サミュエルが松葉杖を全て燃やしてしまったと思うが…………


様々なことに想いを馳せているとようやく目的地に着いた。そこには大きな木の下に卵のような形をした背もたれがある丸い白い椅子が置かれてあった。サミュエルがアリスのために作った数々の品の一つだ。


「よいしょっと…ふぁ〜あ、やっと着いたわ!」


車椅子をその卵型の椅子に近づけ、慣れた所作でその椅子に座る。車椅子をテーブルがわりにして持ってきたお菓子を広げる。

今日はフィナンシェとビスコッティ、クロッカンを焼いた。飲み物はワインを小さなボトルに詰めて持ってきた。その全てを今すぐ食べ尽くしてしまいたいほど美味しそうだ。一息つき、アリスは持ってきた本を開く。アリスが読むのは大抵小説か世界中を描いた画集だった。アリス曰く小説はこの世界にないどんな場所にも行けて沢山の体験を出来るし、船に乗る事が容易でない足の悪いアリスを画集に載る沢山の絵は色々な所に連れていってくれた。急に瞼が重くなる。お菓子を食べていたから眠くなってしまったのかもしれないとアリスは思う。そのままアリスは深い眠りに落ちた。








《この作品は未成年の飲酒を推奨するものではありません。物語の時代背景状そのような表現がこれからも出てきますが、ご理解頂ければ光栄です!》


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