第3話 wonderland

「はっ……!!!」


突然目が覚める。さっきのはなんだったのだろうか?夢なのか…などと考えてみるが同時に奇妙な赤いものが目に入る。血、だろうか………?見渡すと丸い筒状の建物にいるらしく上を見上げるとアリスが落ちて来たであろう黒く深い穴がぽっかりと空いている。壁やテーブル、椅子は鮮やかなブルーで纏められ所々ブラウンの木材が柱や椅子の脚などに使われており、それがブルーを引き立て上品な部屋になっている。


ーダンッー


部屋を眺めているとふと、大きな音が部屋の中央からした。するとそこには今までなかったはずの小さな丸いテーブル。その上にはミルクとクッキーのようなものが置いてある。


「何かしら………?」


アリスは近づいてみたいと思うが車椅子が無いため、なかなか近づけない。両腕を床につけ手を一歩前に、後から引きずるように胴体を前に。なかなか進まない。しかし、諦めるわけにはいかないのだ。ここにいたって何も出来ないのだから。


「はぁ………」


やっとの思いで中央のテーブルの下まで来る。それでもまだ問題があった。それは、遠くから見たときには分からなかったが、そのテーブルはアリスの胴体より少し高く手を伸ばしても机の上には届かなかった。


「ん〜………あと、少し……!!」


アリスはこれでもかというほど思いっきり手を伸ばす。すると………


ーパリーンー


優雅な音を立ててミルクがガラスの容器ごと落ちる。その落ちたガラスのかけらを見ると、《drink me 私を飲んで》と書いてあった。

と、その時………


ードドドドド……キィー……バーン………ー


突然の地響きにアリスは驚くがここでもやはり足のないアリスはただ怖がることしか出来なかった。建物が揺れる、置いてあった椅子がズレてあっちこっちにいっている。アリスはその音と揺れに怖くなりギュッと目を瞑る。


ー……………ー


突然ものが動く音が消え、静寂が戻り、地響きも終わる。そして、目を開けるとアリスの胴体より少し大きいくらいの大きさの扉があった。さっきまではなかったはずだ。心なしか、いや、確実にこの部屋自体の大きさが大きくなっている。椅子やテーブルは位置はめちゃくちゃだが、大きさは変わっていない。けれどさっきまでより床が広く心做しか天井の闇はより深くより高くなっている。アリスは取り敢えず、目の前にある扉を開けた。こんな所で悩んでいてもしょうがないのだ。


ーキィーイイー


古い建物なのか、さっきの地響きで歪んでしまったのか、少し強めに押すことでやっと開いた。足も車椅子もないアリスがドアを大きく開けることは出来なかったが、ドアの隙間から見た外の世界は驚くべきものだった。

それは………


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