幻想アリス

泉 京治

余興

あぁ、焼けてしまった。

何もかも、私の大好きな絵本はよく燃える。

外の世界を教えてくれた写真は黒を知る。

美しい飾りのついたマホガニーの机は赤く染る。

何もかもが飲み込まれていく。赤い怪物に。


「アリス!!………アリス!!…」


誰かが呼んでる気がする。

とても安心できる優しい声色。

あれ?

なんで私のお家は真っ赤なのかしら?

お茶会はもう終わってしまったの?


「………!!………!!!!」


また誰かが呼んでる。

聞こえないの。


あぁ、何もかもが赤く赤く染まる。

ダメ…ダメ……

苦しい…痛い……喉が焼ける。

胸に肺に重たい空気がのしかかる。


「アリス………!!どこだ!?…」

「あっ………あっ……」


既に声がは出ない。

手を伸ばしても届かない。

私のいる場所以外、この部屋は怪物が食べ終えた。。

もうすぐ私も呑み込まれる。

長いドレスの裾にジリジリとそれが迫る。。

逃げようたって足が動かない。

足はないから…

車椅子はもう遠くへ。


お願い!やめて!私の世界を壊さないで!!

大切な宝物を……

なんで私ばかり


遂に意識は自分のものでなくなった。その時、ふと声が聞こえた。




ーアリスは傲慢だわ。怠惰だわ。辛いわね悲しわね。でも自分でやったのにまだ助けを求めるなんて!ー

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